女性ホルモンのエストロゲンに善玉コレステロール上昇効果
更年期が来る前の女性は血圧の薬、高脂血症の薬、血栓症の薬を予防的に飲んでいるのと同じ状態です。
女性ホルモンの名前は、エストロゲンと言います。その第一の作用は、妊娠できる身体をつくり、妊娠を継続させ、さらに母性愛を作り出す作用です。
しかし、エストロゲンには生殖以外の働きもあるのです。エストロゲンは悪玉コレステロール(LDL)を著明に下げ、反対に善玉コレステロール(HDL)を上昇させます。また、血管平滑筋に対して、一酸化窒素(NO)を分泌させて、急速な弛緩(しかん)を引き起こし、血圧も下げます。
更年期前の女性は血圧、コレステロール、骨粗鬆症から“守られている”
さらに、NOはアスピリンと同じように抗血小板作用を発揮します。実際、NOを産生するニトログリセリンは、高血圧緊急症や狭心症発作に対する薬としても世界中で使われています。
すなわち、女性は降圧剤、高脂血症治療薬、抗血栓薬という薬を、更年期前までは飲んでいる状態なのです。さらには、女性ホルモンは骨を分解する破骨細胞の働きを抑制して骨粗鬆(そしょう)症を予防します。
ホルモン補充療法に乳がん発生率上昇の可能性
したがって突然、女性ホルモンが出なくなった更年期の女性がどれほど大変な状況になるか想像できます。
女性ホルモンを閉経後も維持するためにホルモン補充療法というものがあります。ホルモン補充療法は日本ではあまり普及していませんが、欧米では50%以上の女性がホルモン補充療法を受けています。
なぜ、ホルモン補充療法が日本ではあまり受け入れられていないか、それはエストロゲンを長期にわたって、高濃度で持続するとエストロゲン依存性腫瘍、すなわち乳がんの発生率が上昇するからです。
エストロゲン作用を持つ植物成分「イソフラボン」
そこで女性ホルモンの代わりに登場するのが、エストロゲン作用を持つ植物成分イソフラボンです。
エストロゲン作用を持つ代表的な植物は、皆さんがよく食べている大豆です。その理由は、イソフラボンの構造式がエストロゲンに似ているからです。イソフラボンは、大豆のえぐみ成分の一つで、赤ワインなどに含まれているポリフェノールの仲間です。
イソフラボンは大豆の中にわずかに0.2%程度しか含まれていませんので、ときどきしか大豆製品を食べない場合にはイソフラボンの効果は期待できません。
大豆イソフラボンに乳がん予防効果?
大豆製品は古くから日本人の食生活をあらゆる場面で支えてきた大切な食材です。女性ホルモンは乳がんの発症を促進してしまう働きがあるのですが、大豆イソフラボンは女性ホルモンの働きを阻害するので、乳がんを予防する効果があるのではないかといわれています。実際にみそ汁、豆腐、納豆などを多く食べるヒトでは乳がんの発生率は、50%くらい下がります。
そしてイソフラボンは男性にとってもよい効果があるのです。毛髪を生き返らせ、前立腺肥大、前立腺がんを予防する効果が報告されています。
やはり日本古来の大豆を使ったみそ、しょうゆ、納豆は、健康によいのですね。しかし、現代のコーヒー、パン、目玉焼きと言った朝食では、イソフラボンは十分に取れません。イソフラボンの薬理学的効果を出すためには、イソフラボンのサプリメント30ミリグラムがよいと思います。