筋肉を構成するのはタンパク質、アミノ酸
筋肉は運動神経によって支配されていて、運動神経からの電気信号で収縮します。運動神経がケガや脳卒中などで傷害されると、信号が筋肉にいかなくなり麻痺(まひ)が起き、さらに筋肉は萎縮してしまいます。すべての筋肉には常に運動神経から電気信号が流れていて、運動をするときには、その筋肉に周波数の高い電気信号が流れ、収縮するという仕組みになっています。
筋肉の構成要素はタンパク質、すなわちアミノ酸です。そして、毎日少しずつ入れ替わり、約2カ月でほとんど全部が入れ替わってしまいます。この筋肉の構成成分であるタンパク質の主成分は、ロイシン、イソロイシン、バリンといった3種類のアミノ酸で約40%を占め、分岐鎖アミノ酸(BCAA=Branched Chain Amino Acid)と呼ばれています。
運動時に最も必要なアミノ酸、BCAA
BCAAは単純なアミノ酸で、他のアミノ酸と違って簡単に分解されやすい構造です。この単純なアミノ酸が筋肉の主な成分なのです。その理由は、運動時に筋肉を動かすエネルギーであるグルコースがなくなったときに、この単純な構造のアミノ酸がグルコースに変換されて、筋肉のエネルギー源となるからです。筋肉が自分で自分を食べるようなものです。
マラソンランナーが35キロくらいの地点で急にスピードが落ちるのを見たことがあると思います。食べるBCAAがなくなったためです。マラソンやサッカーで後半バテないためには、BCAAが非常に大切です。運動時に最も必要なアミノ酸と言えるでしょう。
運動をしなくてもBCAAは必要
BCAAは食事として摂取される必須アミノ酸(9種)の約50%を占め、1日の推定必要量は4グラム程度です。鶏肉には100グラム中3グラム程度、卵1個には1グラム、納豆1パックには1グラム程度のBCAAが含まれています。やはり毎日、動物性タンパク質、卵、大豆などが必要になるのですね。
筋肉は適当な運動をすることによって増大し、全く運動をしないと次第に痩せていくことは経験済みです。しかし、最初に書いたように筋肉には常に神経から電気信号が流れ、わずかに収縮と弛緩(しかん)を繰り返しています。すなわち、運動をしなくてもBCAAが必要なのです。
一日中机に向かい歩くだけ、は寝たきりと変わらない
一日中机に向かい、歩くだけの場合、筋肉にとっては負荷のかからない状態であり、寝たきりとあまり変わりはありません。すなわち、筋肉は痩せていくのです。この萎縮を防ぐために、スポーツ選手でなくてもBCAAは大切です。
BCAAはサルコペニアへの効果も期待
BCAAの中でもロイシンは、筋タンパク質の分解を抑制するので、結果として筋タンパクの増加を促します。BCAA補充は加齢に伴う骨格筋減少症(サルコペニア)に対する効果も期待されています。
アミノ酸は消化管に入るとすぐに腸管の内皮細胞に吸収され、身体の筋肉に回る前に小腸や肝臓などで利用されてしまいます。それを避けるために、食事で食べたタンパク質が消化吸収されて、肝臓に吸収されたところを見計らって飲むのが良いです。割合は、「イソロイシン:ロイシン:バリン」=「1:2:1」とロイシンを多くするのがよいです。タンパク質は摂取してから消化、吸収されるまで2~4時間かかりますが、アミノ酸は消化される必要がないので、30分ほどですぐに吸収され、食後2時間以降であれば、筋肉に無事に届きます。