「六君子湯(りっくんしとう)」という漢方薬をご存じですか? ドラッグストアでもよく見かける六君子湯は主に胃腸の不調に用いられます。また、体力が低下し、手足の冷えが気になる人にもおすすめの漢方薬です。
ここでは、六君子湯が効果を発揮する症状や副作用の有無について解説します。
六君子湯とは?
六君子湯は、主に8つの生薬から構成されますが、そのなかでも作用の中心的役割を果たす6種類の生薬(蒼朮、茯苓、人参、半夏、陳皮、甘草含)を主薬とすることから名付けられました。
六君子湯は、胃の水分の循環を整えることでさまざまな胃の不調に働きかけます。医療機関でもよく処方される漢方薬です。
六君子湯を構成する生薬の作用は以下の通りです。
生薬一覧
蒼朮(そうじゅつ)
キク科のホソバオケラの根茎。蒼朮の代わりに白朮(びゃくじゅつ)で構成されていることもあります。主要薬理作用は胃排出能改善作用、抗消化性潰瘍作用、血糖降下作用、抗炎症作用、中枢抑制作用、抗菌作用。
茯苓(ぶくりょう)
サルノコシカケ科のマツホドの菌核。主要薬理作用は抗腫瘍作用、腎障害改善作用、抗炎症作用、鎮吐作用、利水作用、胃運動機能促進作用。
人参(にんじん)
ウコギ科のオタネニンジンの細根を除いた根。主要薬理作用は抗潰瘍作用、血中脂質低下作用、副腎皮質ホルモン様作用、中枢抑制作用、中枢興奮作用、抗疲労作用、鎮静作用。
半夏(はんげ)
サトイモ科のカラスビシャクの塊茎。主要薬理作用は抗嘔吐作用、抗炎症作用、ヒスタミン遊離抑制作用、血圧降下作用。
陳皮(ちんぴ)
ミカン科ウンシュウミカンまたはその他の近縁植物の成熟した果皮。主要薬理作用は血管収縮作用、血圧上昇作用、気管支筋弛緩作用、抗アレルギー作用、中枢抑制作用。
大棗(たいそう)
クロウメモドキ科(Rhamnaceae)のナツメ(Zizyphus jujuba Miller var. inermis Rehder)またはその他の近縁植物の果実。抗アレルギー作用、フルクトフラノシド、抗補体活性、睡眠延長作用、抗潰瘍作用、抗ストレス作用。
生姜(しょうきょう)
ショウガ科のショウガの根茎。主要薬理作用は鎮痛作用、鎮咳作用、鎮吐作用、健胃作用、腸管輸送能亢進作用、下痢止め作用、胃排出能亢進作用。
甘草(かんぞう)
マメ科(Leguminosae)のGlycyrrhiza uralensis Fischer, Glycyrrhiza glabra Linneまたはその他同属植物の根およびストロン。主要薬理作用は鎮静・鎮痙作用、鎮咳作用、抗消化性潰瘍作用、抗炎症作用、肝保護作用、抗アレルギー作用、子宮筋収縮抑制作用。
※「QLife漢方 生薬辞典」より
六君子湯は消化不良による胃の不調や、食欲のないときに用いる
六君子湯は、やせ型で顔色が悪く、疲れやすい人に向いている漢方薬です。胃腸の働きをよくして、水分の循環を改善し、胃炎や胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐といった症状に用いられることがあります。
六君子湯の副作用と注意点
六君子湯は、副作用を起こすことがあります。飲み始めてから、胃の不快感や食欲不振、軽い吐き気、下痢、発疹、発赤、かゆみといった症状があらわれた場合は使用を中断し、医師や薬剤師に相談してください。
また、まれに以下のような重篤な副作用を起こす場合もあります。
重篤な副作用
偽アルドステロン症
低カリウム血症、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、むくみ、体重増加
ミオパチー
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、脱力感、こむら返り、筋肉痛
肝機能障害、黄疸
AST、ALT、ALP、γ-GTPなどの著しい上昇、黄疸
六君子湯に含まれる生薬「甘草」は、過剰摂取により偽アルドステロン症を起こす可能性があります。甘草を含むほかの漢方薬と併用する際は、摂り過ぎに注意してください。
漢方薬は専門家に処方してもらうのがベスト
漢方薬は、体質に合わせて選ぶことが重要です。同じ症状であっても、体質に合わない場合には、効果があらわれなかったり副作用を起こしやすくなったりするためです。
胃の不調に効果的な漢方薬は、六君子湯だけではありません。四君子湯(しくんしとう)や安中散(あんちゅうさん)など、別の漢方薬もあるため、体力や体質に合わせて適切な漢方薬を選ぶ必要があります。
漢方薬を選ぶ際は漢方に詳しい専門家に処方してもらうのがベストです。最近では、オンラインで悩みを相談し、薬剤師とAI(人工知能)の分析によって個人に合った漢方薬を提案してくれる「あんしん漢方」などのサービスも登場しています。「自己判断で漢方薬を選ぶのは不安」という人は、利用を検討してみましょう。
まとめ
六君子湯は、胃腸機能の低下による胃痛や消化不良、食欲不振、嘔吐といった症状に用いられる漢方薬です。ただし、妊娠中の方や授乳中の人、子供、高齢者の場合、漢方薬を服用する際には注意が必要です。自己判断で使用せず、事前に医師や薬剤師などに相談しましょう。