健康長寿の重要性から「予防」に関心
国民皆保険の日本では、長い間「治療」に比べて「予防」は軽く見られる傾向にあった。ところが、単なる長寿ではなく、健康寿命の重要性が指摘されるようになるにつれ、「予防」に目を向ける人が急速に増えている。具体的にどう動けばいいのか分からない—という方へ。専門家が、本当に正しい予防とは何なかを説いた1冊が、『循環器専門医だから知っている! 40歳からの正しい予防医学』(ダイヤモンド社刊、1760円)だ。
著者の東京国際クリニック院長で循環器内科医の高橋通医師=写真=は、「思い残すことのない人生を手に入れるために」という思いで著した予防医学の入門書である。
「毎日、人間ドックの結果説明をお一人当たり1時間ほどかけて解説している中で、もっと多くの方に正確な情報をお伝えすることができないかと考えた末に、書籍という形でお伝えする方法に辿り着きました」と出版の経緯を語る。
「読み物」の視点で健康を語る
健康関連書籍の多くが「実用」の観点から作られているのに対して、本書は「読み物」の視点で描かれているのが特徴。ページを順に読み進めるうちに、自然に私たちの身の回りにある生活習慣病などの具体像が頭に入り、読み終えるころには自然に予防への意識が飛躍的に高まっていることを感じるはずだ。
人間ドックに力を注ぐ著者だが、必ずしも人間ドックだけが予防の入り口ではないと説く。
健康診断の結果を放置しないこと
「大切なのは、自分自身の体に目を向けてあげてください—ということ。それは必ずしも人間ドックという方法でなくてもいい。まずは健康診断でもいいから、その結果を放置しないことが何より重要」と唱える。たしかに精密検査や再検査項目を無視したのでは、検査を受けた意味がないのだが、実際にはそこに目を向けることなく、それでも「長生きしたい」と願っている人が少なくないということだ。
本書では、さまざまな疾患の仕組みと特徴を詳細に語っている。興味のある項目から読んでもいいが「読み物」としてのクオリティーが高いので、できれば章を追って順に読み進めることをお勧めする。自然な流れができているので、苦もなく読み進められる。
「人間ドックを受けるならどこの施設がいいの?」「健診で要検査って出たけれど、恐くて病院に行けない」などの悩みを持つ人は少なくない。そんな人に本書を読んでほしい。あるいは家族や友人にそんな悩みを持つ人がいたら、本書を勧めてほしい。「治療依存型」の思考から「予防」に目覚めるきっかけとして、大いに役立つ内容が凝縮されている。
最低限知っておきたい人間ドック受診の心得
- 遅くとも40歳過ぎたら一度は人間ドックを!
- 健診の「異常なし」は「病気がない」とイコールではない
- 人間ドックの結果で重要視すべきは「総合判定」よりも「要治療」
- 検査時の問診票には積極的に疑問や質問を記入すべし
- ドック受診時は「おくすり手帳」を忘れずに持参すること