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「脳動脈瘤」最新治療法(1)~コブの破裂リスクを評価し治療を選択

「脳動脈瘤」最新治療法(1)~コブの破裂リスクを評価し治療を選択
病気・治療
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くも膜下出血の最大原因、脳動脈瘤

命に関わる脳の病気のひとつ、くも膜下出血の最大原因の脳動脈瘤(りゅう)。その高度な治療が近年進化し、体への負担の少ない医療機器(デバイス)が次々と登場している。治療の選択肢が広がると同時に、再発予防にも貢献しているというのだ。

脳動脈瘤は、脳の血管(動脈)がコブのように膨らみ、大きくなって神経を圧迫すると頭痛などの症状を引き起こす。

だが、やっかいなことに無症状のことが多い。知らぬ間にコブが膨らんで破裂すると、くも膜下出血に至る。予防で有効なのは、脳動脈瘤に対する破裂予防の治療だ。

破裂予防の治療が有効

「脳ドックの受診だけでなく、頭痛や転倒の頭部打撲などでMRI(核磁気共鳴画像診断)検査を受け、偶然、脳動脈瘤が見つかるケースが多いです。脳動脈瘤があっても、破裂のリスクが低ければ経過観察で済みます」

東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座の村山雄一主任教授が指摘する。そしてこう続ける。

「当院では1万人以上の脳動脈瘤の患者さんを診ていますが、治療が必要だったのは約3割です。脳動脈瘤の大きさや形、生じた血管の位置などで破裂リスクは変わります。その評価が重要なことをぜひ多くの方に知っていただきたいと思います」

コブが4ミリ以上で破裂リスク高まるが…

脳動脈瘤のコブの大きさが直径4ミリ以上になると、4ミリ未満よりも破裂のリスクが当然高くなる。ただし、直径5ミリのコブが見つかったとしても、すぐに治療が必要になるわけではない。そのことを知っておくことが大切だという。

なにしろ、全く予想もしていない状況で、脳動脈瘤と診断されれば動揺する。「治療が必要」といわれればなおさらだ。しかし、治療が必要なケースは半数に満たない。また、治療法も進化している。

血管内治療

「脳動脈瘤の治療法は、(1)血管内治療、(2)頭を切開して行う開頭手術に分けられます。近年、血管内治療は新しい治療法がいくつも登場しています。治療法に不安を感じたら、セカンドオピニオンを活用しましょう」

血管内治療は、脚や腕の血管からカテーテルという細い管のような医療機器を挿入し、血管の内側からコブが破れないように治療する。糸のような医療機器を詰める「コイル塞栓術」や、網目のついた筒状のステントを置く方法があり、治療で使うデバイスの進展が目覚ましい。

開頭手術

一方、開頭手術は、コブの根元をクリップのような医療機器で止めて血流がコブに入らないようにする。血管の外側からアプローチする方法で、クリッピング術という。1937年に米国の脳神経外科医が初めて成功して以来、長い歴史を持つ治療法だ。近年は、小さく切開して行う小開頭クリッピング術も行われるようになっている。

「血管内治療が進展して適用範囲が拡大していますが、開頭手術が向いているケースもあります。どちらの治療も行える医療機関を選択することが大切です。脳動脈瘤では、コブの破裂リスクの評価と、治療の選択が重要であることを覚えておきましょう」

【写真】
脳動脈瘤の血管内治療の様子(東京慈恵会医科大学附属病院)

解説
東京慈恵会医科大学脳神経外科学主任教授
村山 雄一
東京慈恵会医科大学脳神経外科学講座主任教授、同大脳卒中センター長、脳血管内治療部診療部長。1989年、東京慈恵会医科大学卒。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校脳血管内治療部教授などを経て、2013年から現職。日本脳神経外科学会専門医、日本脳血管内治療学会専門医指導医など、多数の認定資格と役職を有す。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。