糖尿病治療の進展は目覚ましい。血糖値をコントロールするホルモンのインスリンが枯渇した場合は、インスリンを補充するインスリン療法が不可欠となる。その方法として、AI(人工知能)を利用して自動的にインスリンを補充できるインスリンポンプも登場した。
週1回の注射や吸引式も
食事をすると、消化吸収されたブドウ糖が血中に流れて血糖値が上がり、膵臓からインスリンが分泌される。細胞や臓器がブドウ糖を取り込んでエネルギー源とし、私たちは生きている。糖尿病でインスリンの分泌量が減少すると、この仕組みが破綻し、体に悪影響を及ぼす。足りないインスリンを補うのがインスリン療法だ。
「インスリン製剤は、作用発現までの時間が速く、作用時間が短いものや長いものなど、さまざまな種類が登場しています。糖尿病のタイプや状態によって使い分けます」
最新治療について東京慈恵会医科大学の西村理明主任教授が説明する。
食後血糖値を抑えるため、インスリン注射は食前に1日3回行うのだが、1日1回の製剤もある。昨年8月には、週1回投与のインスリン製剤が日本で初めて承認申請された。
「欧州では吸入型のインスリン製剤もありますが、1回の吸入でインスリン皮下注の10倍量くらい吸わないと効きません。注射でないのは便利ですが、いかに効果的に使用するかが問われます」
持続血糖モニターと合体
インスリン療法では、皮下注射を行うのが面倒で、うっかり忘れてしまうようなことも起こる。それを防ぐため、自動的にインスリンを補填(ほてん)するインスリンポンプと、持続型血糖モニター(CGM)を組み合わせた「SAP(サップ療法)」が、2014年に保険適用となった。
腹部にセンサーとインスリン注入できる小さな機器を装着する。CGMのデータを基に、高血糖時に合わせて適量のインスリンが自動で投与される機器も登場している。西村教授は、その最先端研究を行ってきた。
「インスリンが必要になる量やタイミングは、患者さん一人一人で異なります。それをプログラムが自動的に行ってくれる医療機器は、非常に便利です」
インスリン療法が必要なのは、大人の糖尿病患者だけではない。インスリンの分泌量が枯渇する1型糖尿病は、子供も発症する。自動的に必要量だけ補填できるSAP療法は、学校生活を快適に過ごすためにも役立つ。
「子供の頃から継続している治療は、大人になっても続けるべきでしょう。しかし、小児発症の1型糖尿病でSAP療法を活用し、20歳で公的助成がなくなって、SAP療法を継続できなくなる人が少なくありません。その制度の改善を厚労省に再三お願いしていますが、新たな支援策は得られていません」
18歳以下で1型糖尿病を発症すると、20歳までは「小児慢性特定疾病」により公的助成で医療費の自己負担が軽くなるが、20歳になると助成が切れるのだ。
「画期的で便利なデバイスも、制度に阻まれることで、使用すべき人が使用を諦めることがあります。この状況は変えなければいけないと強く思っています」と西村教授は話す。