コラム

法律だけでなく心にも寄り添う『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』

法律だけでなく心にも寄り添う『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと』
コラム・体験記
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親の死後、障害のある兄弟姉妹とどう生きるか?

想像してみてほしい。もし、自分に障害のある兄弟姉妹がいて、ケアし続けてくれた親が亡くなったとき、自分はどうすればいいのか。ズバリのタイトルでそれらの疑問や不安を自身の経験も混じえながらわかりやすく解説してくれるのが、『きょうだいの進路・結婚・親亡きあと 50の疑問・不安に弁護士できょうだいの私が答えます』(中央法規出版刊、1980円)。著者は、障害のある弟がいて、幼少期から将来に対する不安や悩みを抱えながら育ち、かつ現在弁護士として活動する藤木和子さん=写真。

疑問・不安への対処法や解決法を50項目のQ&A形式で

「第3章の関心のある項目から読んでみてください」

本書の前書き部分にはこう書かれている。前段となる第1章・第2章で取り上げているのは、藤木さん自身の体験や、ほかのきょうだいのことについて。実際に読者が気になる疑問・不安への対処法や解決法が、Q&A形式でイラストやポイントまとめ、コラムなどを混じえながら50項目にわたって具体的にわかりやすく解説されている。

たとえば—。

「一生、世話をしなくてはいけないのですか?」「就職活動で障害のある姉のことを話すか迷う」「弟中心の実家を出たい」「交際相手の親から結婚を反対されています」「異性の妹の入浴や排泄などの介助に抵抗がある」「そもそも成年後見人って?」

「気持ち」にも寄り添う

さまざまな視点かつ細かなQ&Aの、気になるところだけ見ていくだけでも大いに参考になる。中には、ゲームに多額の課金をしてしまった、人を突き飛ばして逮捕されてしまったなど、だれもが直面する可能性のあるトラブルの対処も含まれている。さらにいえば、親の介護や相続などの際の参考として置き換えられるような項目もいくつもある。

注目したいのは、将来かかる負担や責任、世間にどう見られているだろうかという、「気持ち」の部分に寄り添ってくれるような内容も充実している点。そこに著者の思いが込められている。

藤木さんは、こう思いを語ってくれた。

「法律はとてもシンプルで、『障害のある兄弟姉妹の世話をしなくてはいけない?』『どの職業を選ぶ?』などに対して答えを出すことができます。けれど、きょうだいの課題は複雑で、法律だけでは解決できない家族の関係性や気持ちの問題もあります。だからこそ、何かを考えるときにスタートラインとして、判断材料の一つとして、この本を読んでいただけるとうれしいです。きょうだいを知りたい、一緒に考えたいという方にも読んでもらいたいです」

読み続けるうちに、気づけば気持ちが軽くなっている。

親亡きあとの準備として確認・相談すること

【親のこと】

現在の生活状況や健康状況、財産や相続のこと。病気、介護、看取り、葬儀の意向など。財産、重要書類などの置き場所

【障害のある兄弟姉妹のこと】

現在の状況、緊急時に相談できる担当者や連絡先、将来の生活場所、行政や支援者の関わり、成年後見人のこと

【ほかのきょうだいのこと】

上記2つの情報共有とそれぞれの生活常用や意向の確認、役割分担の相談など

※本書から抜粋

執筆者
ジャーナリスト
田幸 和歌子
医療ジャーナリスト。1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。「週刊アサヒ芸能」で健康・医療関連のコラム「診察室のツボ」を連載中。『文藝春秋スーパードクターに教わる最新治療2023』での取材・執筆や、健康雑誌、女性誌などで女性の身体にまつわる記事を多数執筆。