糖尿病 糖尿病の最新治療

糖尿病の最新治療(2)~肥満でなくても2型糖尿病になる

糖尿病の最新治療(2)~肥満でなくても2型糖尿病になる
病気・治療
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内蔵型肥満が2型糖尿病の引き金

食いしん坊というと肥満を思い浮かべる人が多いと思うが、2型糖尿病については、肥満でも発症しない人がいれば、肥満でなくても発症してしまう人がいる。

2型糖尿病は、(1)血糖値をコントロールするホルモンであるインスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)、(2)膵臓(すいぞう)からのインスリンの分泌量が減り、高血糖状態が続く。内臓脂肪がたまっていると、インスリン抵抗性に関わる物質が放出される。

このため、暴飲暴食による内臓型肥満は、2型糖尿病の引き金といわれる。

遺伝が2型糖尿病に関わる?

だが、それほど太っていなくても2型糖尿病になるのはなぜか。

千葉大学医学部附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科科長の小野啓准教授が解説する。

「2型糖尿病も体質が関係します。遺伝的にインスリンを出す力が弱く、インスリンが効きにくい体質があるとされているのです。体質に加えて、食べ過ぎや運動不足が続くと、それほど太っていなくても2型糖尿病になる人はいます」

小野准教授は、糖尿病の診断・治療を数多く手掛ける一方、インスリン抵抗性などの研究を長年行っている。

「体質によっては、暴飲暴食をしていなくても高血糖になります。健康診断で高血糖状態が続くようなら、医療機関を受診して原因を突き止め、適切に対処していただきたいと思います」

健診D判定でも即治療ではない

健康診断では、空腹時血糖値126(単位・㎎/dl以下同)以上で糖尿病の疑いが強くなる。110~125はグレーゾーンで詳しい検査が必要になる。100~109は正常高値。100未満が正常値。

それほど太っていない状態で、暴飲暴食もしていないのに、治療が必要な「D」判定を見るとショックが大きいだろう。糖尿病は、進行すると尿に糖が出るようになり、腎機能の低下、網膜症による失明、心筋梗塞や脳梗塞のリスクアップなど、怖い合併症があるからだ。

「D判定でも、インスリン分泌量やインスリン抵抗性などの状態によっては、必ずしもすぐに治療が必要になるわけではありません。ご自身の状態を把握するために医療機関をうまく活用しましょう」

適切な処置で長寿も可能

空腹時血糖が130の人と、250の人では、明らかに高血糖状態は異なる。高血糖で2型糖尿病イコール怖い合併症にすぐになるわけではない。「糖尿病」という怖そうな名称が、病気に対する誤った考え方に結びついていることがある。そのため、日本糖尿病学会などが、糖尿病という名称を世界共通語の「ダイアベティス」に変更すると発表している。

「2型糖尿病をむやみに怖がる必要はありません。適切に対処することで長寿も実現可能です。ただし、高血糖状態の放置は不健康につながります」

両親が糖尿病なら早めの受診を

両親が糖尿病と診断されている人は、体質的に高血糖になりやすい可能性もある。食生活を見直しても高血糖が続くようなら、早めに医療機関を受診してほしい。治療薬が必要か、不必要か、早めに診断してもらうことが大切だからだ。「正しい知識を持って対処していただきたいと思います」と、まず「己を知る」ことの大切さを小野准教授は説いている。

解説
千葉大学医学部附属病院内科科長、准教授
小野 啓
千葉大学医学部附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科科長、准教授。1995年、東京大学医学部卒。米国アルバートアインシュタイン医科大学、埼玉医科大学などを経て現職。糖尿病や肥満、インスリン抵抗性について診断・治療・研究を数多く行う。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。