乳がんは不妊治療にも影響
国内では9人に1人の割合で発症する乳がん。40代後半から50代前半が発症のピークとされますが、30代でもなります。早期発見・早期治療で克服することはもちろん可能ですが、再発するリスクが10年間は続くことになり、不妊治療にも影響します。パートナーの男性もこのことをよく知っておく必要があります。
「たとえば、乳がん治療後、不妊治療で女性ホルモンのエストロゲン製剤を投与するときには、再発していないかどうか確認することが不可欠です。仮に再発に気づかずにエストロゲン製剤を使用してしまうと、がん細胞を増殖させる恐れがあるからです」
マンモで見逃された再発を「見つけた」
こう警鐘を鳴らすのは、東海大学工学部の高原太郎教授。放射線専門医で、無痛のMRI(磁気共鳴画像撮影)乳がん検査「ドゥイブス・サーチ」という新しい検査法を開発し、普及に尽力しています。
「再発の確認では、乳房X線検査のマンモグラフィや超音波エコー検査が一般的です。しかし、それらの検査で『再発していない』と判定された人の再発がんが、ドゥイブス・サーチで見つかることがあるのです」
不妊治療のエストロゲン製剤が再発“後押し”することも
乳がんにはいくつかの種類があり、中でも患者数が多いのが「ホルモン受容体陽性」のタイプです。女性ホルモンのエストロゲンと関係が深く、治療ではホルモンの働きや分泌を阻害する抗エストロゲン薬などが使われます。つまり、「ホルモン受容体陽性」の乳がんが生じているときに、不妊治療でエストロゲン製剤を使用してしまうと、乳がんの後押しをすることになるのです。
再発に限らず、知らないうちに乳がんになっている場合もしかりです。国内の乳がん検診受診率は5割を切っています(厚生労働省2022年「国民生活基礎調査」)。2人に1人は乳がんの有無がはっきりしていないともいえます。
忙しい40代前後は簡便かつ高精度のドゥイブス・サーチを
「不妊治療を受ける前に、乳がんの有無を検査できちんと調べることは大切です。乳がん検診を受けていない人はぜひ受けてください。マンモグラフィやエコー以外に、ドゥイブス・サーチという選択肢もあります」
日本では晩婚化が進み、40代後半で出産する人の数も増えています(厚労省2022年「人口動態統計」)。不妊治療の新たな保険適用(女性の年齢が43歳未満が対象)も2022年から始まりました。特に40代は乳がん発症リスクが高い年齢でもあるため、検査を活用することが早期発見・早期治療につながります。
「40代前後の方は公私ともに忙しいと思います。だからこそ、簡便で1回2万円前後で比較的安価、なおかつマンモグラフィよりも高精度なドゥイブス・サーチは役立つと思います」
ちなみに、男性も1000人に1人は乳がんになります。女性だけの問題ではないことも覚えておきましょう。