鉄の4つの役割
体内では生成できない「鉄」による体調の改善「鉄活」を説く、広島ステーションクリニックの石田清隆理事長は、鉄の役割を4つに分類する。
- 酸素の運搬(Oxygen Transportation)
- 神経伝達(Neurotransmission)
- コラーゲン合成(Collagen Synthesis)
- エネルギー産生(Energy Production)
その頭文字をとって、「ONCE(ワンス)」と名付け、それぞれの役割と必要性を十分知っておくべきだと提唱する。
ヘモグロビンの活動低下で酸欠状態に
まず酸素の運搬である「O」の役割について。われわれが生きていくうえで必要な酸素、それは呼吸によって体内に取り入れられ、血液中に溶け全身の細胞へと運ばれるわけだが、そこで重要なのが鉄を含む血液中の成分、ヘモグロビンの存在だ。ヘモグロビンを構成する「ヘム」と「グロビン」というタンパク質、そのうちたくさんの酸素と結びつくのが鉄を含んだ「ヘム」である。
「ヘモグロビンの1分子には酸素を運ぶユニットが4つあります。このユニットに酸素ががっちり結ばれることで血液に溶けて運ばれる酸素の量の実に70倍の量が運ばれます。もし鉄が不足したら、ヘモグロビンの活動も十分に行われず、全身に運ばれる酸素の量も減少します。それによって酸欠状態となり、階段を上って息切れしたり、動悸が起きたりします」
脳への酸素が足りないと立ちくらみ、頭痛、肩こりが
全身にも影響が出る。
「脳にいく酸素が足りなくなれば立ちくらみや頭痛が、筋肉に行き渡らなければ肩こりも。鉄不足が引き起こす酸素不足はさまざまな不調を引き起こしますが、鉄不足を解消することで、これらがよくなることはあります」
セロトニン、ドーパミンも鉄からつくられる
続いては神経伝達の「N」について。われわれの抱く感情は、神経伝達物質によって情報が伝えられることによって起こるものである。
「たとえば心を平穏に保つセロトニン。これが足りないと、うつやパニック障害につながるのですが、セロトニンは鉄がないとつくれません」
セロトニンと同じ神経伝達物質でやる気につながるドーパミン、さらにはノルアドレナリン、メラトニンの合成にも鉄は必要な存在だ。
集中ややる気、精神の安定、睡眠にも関係
「ノルアドレナリンが足りないと集中ができませんし、ドーパミンが少ないとやる気がなかなか起きない。つまり、鉄が不足することが、集中力や、やる気の低下に大きな影響を及ぼすのです」
他にも精神の不安定、寝付きの悪さ、睡眠時に何度も起きるなどの睡眠障害にもつながるおそれがある。さらにはその睡眠障害によって頭がぼんやりすることになるなど、鉄不足がメンタル面に及ぼす影響は想像以上に大きいという。
「これら神経伝達物質は、タンパク質が分解されてできるアミノ酸が材料となりますが、それを作るには、ナイアシンやビタミンBなどが必要で、そこに鉄がないと神経伝達物質は作れないのです」
人間の感情や思考といった脳の働きのパフォーマンスの質も、鉄が大きく関わっているのである。