鉄の必要性と体調の改善を説く
常にだるさを感じたり、朝なかなか起きられなかったりすることはないだろうか。爪が割れやすかったり抜け毛が多かったりしないだろうか。肌のハリがなくなり乾燥しすぎていないだろうか。睡眠が浅かったりやる気が出なかったりしていないだろうか。
これらは鉄不足が原因で引き起こされるものであることが多い。そんな鉄の必要性と体調の改善を説いて話題を呼んでいるのが、広島ステーションクリニックの石田清隆理事長の著書『人生を好転させる2-week鉄活』(幻冬舎)だ。内科専門医、美容皮膚科医の長年の経験に基づき「鉄」の重要性を知り尽くした石田医師に、鉄不足が招く不調と解決法について聞いた。
女性は生理で毎月60グラムも鉄を失っている
まずわれわれはどのように鉄を摂っているのだろうか。
「鉄は、体内では生成できないものなので、外から摂るしかないんです。基本的には食事で摂取することになります」
石田医師が、体内のメカニズムを解説する。
「1日の食事の量のなかに約10~15ミリグラムの鉄が含まれており、そのうちざっくり約1割、約1ミリグラムが体内に吸収されます。それに対し汗や便、尿などで出ていくものが約1ミリグラム。つまり、鉄の吸収と排泄はバランスが取れているのです。しかし、女性には生理があります。生理によって約30ミリグラムの鉄が出血とともに失われます。月単位で考えますと、通常失われる30ミリグラムに加え、生理で失われる30ミリグラム、計60ミリグラムの鉄を毎月女性は失うことになるのです」
胃潰瘍やがん、痔の出血でも鉄不足に
とくに女性が鉄不足や貧血になりやすいのはこのような理由が大きい。体の成長期も重なり、部活などで運動する機会も多い思春期の女性は鉄不足になりやすい。
生理のない男性は鉄不足のリスクはないのかといわれれば、そんなことはない。
「たとえば成長期の男の子は、鉄需要が急速に増大するため鉄不足になりやすいです。また、運動によってかく汗とともに鉄は失われます。スポーツ選手などより激しい運動をする人は、『運動性溶血性貧血』という、足裏などへの衝撃で足の血管が潰れることで赤血球が溶血し鉄不足になることもあります。胃潰瘍やがん、痔による出血も見逃せません。男性で貧血症状がみられるときは、これらが原因となる消化管出血が疑われますので胃や大腸検査などを行うこともあります」
生物に必要な地球のエネルギー
では、そもそも「鉄」とは何者なのだろうか。
「地球の中心部は鉄でできているということはご存知でしょうか?」と、石田医師が問いかける。「コア(中心核)」と呼ばれる地球の中心部は主に鉄でできていて、それが地球に磁場を生み出すことで有害な電磁波や宇宙線を防ぐ役割を持つといわれている。
鉄が地球を守ってくれているという見方もできます」
栄養素としての鉄は生物の体をつくる材料になったり酵素の成分になったりするミネラルの一種で、生物にとって非常に大切な存在だという。
「鉄は『REDOX』という酸化還元反応を起こしますが、ほぼ全ての生物はこのREDOX反応によってエネルギーを作り出しているんです。つまり、鉄とは生物のエネルギーにとって必要な存在なのです」