食材 長生きするための食事術 フレイル(虚弱)

長生きするための食事術(2)~腸の老化を防ぐ「いろいろな産地の発酵食品」

長生きするための食事術(2)~腸の老化を防ぐ「いろいろな産地の発酵食品」
予防・健康
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介護保険の最大要因フレイルを食事で防ぐ

いわゆる「メタボ対策」として実践されてきた「食べ過ぎない」ことを意識するあまり、いまの高齢者のフレイル(虚弱)を招く要因となっていることを指摘する鎌田實医師。「いま介護保険の世話になる要因として最も多いのがフレイルで、これを未然に防ぐことができれば、多くの高齢者が「健康長寿」を引き寄せることができるはず」と唱える。

そのために鎌田医師は、腸・脳・血管・骨・筋肉—の5つの部位の老化を「食事」によって防ぐ試みを推奨する。ここでは「腸」の老化防止について解説してもらう。

「脳腸相関」解明で腸活に脚光

近年、腸の健康を重視する書籍や健康番組が増えています。これは、腸にはおよそ1億個の神経細胞があって、自律神経を介して脳とつながっている、という「脳腸相関」の仕組みが解明されてきたことが背景にあるのです。

単に食べたものを消化して栄養を吸収する器官—と思われてきた腸が、じつは脳に匹敵する最重要臓器であることがわかり、それまで「腸活」を後回しにしてきた人たちも、こぞって腸の健康に力を入れるようになってきたのです。

腸内環境を整える善玉菌を増やす

そんな腸の健康を維持するうえで最も重要なのは、言うまでもなく「腸内環境」を整えること。そこで今回私がオススメするのは、腸内の善玉菌を増やすために重要な発酵食品の摂取です。

発酵食品というと、納豆やヨーグルト、みそ、こうじなどが思い出されると思います。いずれも素晴らしい発酵食品なので積極的に摂ってほしいのですが、そこで気を付けてほしいのが「産地」なのです。

各産地の善玉菌が競い合い、腸内環境を良くする

これはオックスフォード大学の研究で明らかになったのですが、「いろいろな産地の発酵食品」を摂ると、腸の中で善玉菌が競い合って腸内環境が良くなるということがわかったのです。

納豆なら水戸—と決め付けるのではなく、北海道や宮城産など、日本各地で生産された納豆を食べ比べるだけでも「腸の健康」をアシストすることになるのです。ぜひ試してみてください。

他にも種類の異なる善玉菌同士を一緒に食べることでも、やはり腸内環境の改善効果が高まります。納豆(納豆菌)ともろみ酢(麹菌)、みそ(麹菌)とナチュラルチーズ(乳酸菌)、ヨーグルト(乳酸菌)と甘酒(オリゴ糖)など、おいしそうな組み合わせが、じつは腸の健康に役立つのです。

そんな絶妙な組み合わせを探してみるのも楽しいものですよ!

鎌田式「腸の健康セルフチェック

  • 下痢や便秘が続いている
  • 以前より便が細くなった
  • 便の色が黒っぽい
  • 朝食を抜いている
  • 食事の時間が不規則

※2つ以上該当する場合は腸内環境の悪化が疑われます

解説
医師、作家、諏訪中央病院名誉院長
鎌田 實
医師、作家。諏訪中央病院名誉院長。1948年6月28日、東京都生まれ。75歳。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院入職。1988年、院長。2005年から現職。日本チェルノブイリ連帯基金理事長。東京医科歯科大学臨床教授他。著書に『鎌田式長生き食事術』(アスコム刊)など。
執筆者
医療ジャーナリスト
長田 昭二
医療ジャーナリスト。日本医学ジャーナリスト協会会員。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒業。医療経営専門誌副編集長を経て、2000年からフリー。現在、「夕刊フジ」「文藝春秋」「週刊文春」「文春オンライン」などで医療記事を中心に執筆。著書に『あきらめない男 重度障害を負った医師・原田雷太郎』(文藝春秋刊)他。