「短命県」長野を「長寿県」にした鎌田實氏が実践する食事術
人の生命の根幹となる「食事」。その中身、質によって、長寿と短命が分かれるのは自明の理である。平均寿命が80歳を超えたいま、長寿を大前提にした上で、高齢になってからの健康を「食事」に求める考え方が脚光を浴びつつある。
そこで今週は、医師で作家の鎌田實氏が実践する、「高齢者が健康に長生きするために必要な食事術」を紹介してもらう。
以前は「短命県」とされていた長野県を、地道な健康指導で「長寿県」に育て上げたことでも知られる鎌田氏が、「腸」「脳」「血管」「骨」「筋肉」の5つのパーツの老化を食事で防ぐためのテクニックを解説する。
問題はメタボから「低栄養」へ
皆さんは20年前に何が流行したかを覚えていますか。じつは20年前に日本中を席巻していたのがメタボリックシンドローム、通称「メタボ」です。まるで太ることが悪であるかの風潮が蔓延(まんえん)したことは、現在の高齢社会に深刻な影を落とす結果となっています。なぜなら、現在の日本で問題になっているのが「低栄養」だからです。
平成28(2016)年度の厚生労働省の調査によると、65歳以上の男性の約13%、女性の22%に低栄養の傾向が見られました。特に近年は一人暮らしの高齢者が増えており、この傾向に拍車がかかっていることが予想されます。「飽食の時代」と言われる現代に低栄養になるなんて、不思議に思われるでしょう。
当時、健康雑誌などで盛んに推奨されたのが「まごわやさしい」です。豆、ごま、わかめ、野菜、魚、しいたけの頭文字をとった合言葉ですが、これを実践していたら低栄養になるのも無理はありません。
現代に必要な新しい合言葉
そこで私は現代に必要な新しい合言葉を考えました。「朝は来た、にぎやかだ」です。
これは油、魚、発酵食品、きのこ、卵、肉、牛乳、野菜、海藻、大豆食品 —を指します。
ごはんやパンなどの他に、これら10品目の中から毎日7品目を取ることを目標にすれば、それだけでも低栄養のリスクを下げられます。ぜひ覚えてください。
健康長寿を目指すならフレイルを避ける
低栄養が何を引き起こすのかと言えば、「フレイル」です。
フレイルとは加齢に伴い肉体と精神の両面が弱っていき、病気になりやすい状態に陥ること。高齢者にも分かりやすい言葉に置き換えると、「虚弱」となります。
この状態が続けば、がんなどの生命に直結する重大疾患や、認知症などのリスクも高まります。健康長寿を目指すうえで、このフレイルは何としても避ける必要があるのです。
そのために知っておいてほしい食事術を次回から具体的に紹介していきます。