肥満 運動・スポーツ

目標を「低く」設定して肥満予防を長く続ける

目標を「低く」設定して肥満予防を長く続ける
病気・治療
文字サイズ

無闇に体重を落とすと逆効果

肥満そのものが、生活習慣病や膝関節などの悪化につながるときには、体重を落とす必要がありますが、医師の指導なくして、無闇に体重を落とすと逆効果になりかねません。

「低体重(BMI=体重㎏÷身長2乗m=18.5未満)では、死亡リスクが上がります。ただ減量だけに意識がとらわれてしまうと、健康的な食べ方ができなくなることがあるので注意しましょう」

タンパク質や食物繊維、欠かせない栄養素を先に食べる

こう話す東邦大学医療センター佐倉病院糖尿病・内分泌・代謝センターの齋木厚人教授は、高度肥満症治療を長年行い多くの人を救っています。

「食事量を減らすときには、タンパク質や食物繊維といった欠かせない栄養素を先に食べ、最後にご飯などの炭水化物(糖質)を食べるようにするのがコツです」

タンパク質は筋肉や臓器、組織などを作るために必要な栄養素です。タンパク質不足の状態が続くと、肌や髪、爪も、ボロボロになり、骨がもろくなる骨粗鬆(そしょう)症や筋力低下に伴うフレイル(心身の虚弱)などにもつながります。

食物繊維は腸の働きをよくすることで、代謝の向上・生活習慣予防・免疫バランスを整えるなど、健康に寄与します。食物繊維を含む野菜には、ビタミンやミネラルなどもたっぷり含まれます。

タンパク質と食物繊維で先に胃袋を満たす

「肥満は、糖質すなわちご飯などの炭水化物や、スイーツなどの菓子類の量が多いことが関係することが多いのです。タンパク質や食物繊維を先に食べ、炭水化物を食べる前に、食欲と胃袋を満たしてしまうことが大切です」

炭水化物やタンパク質、脂質は、人間が生きていくために必要なエネルギーを生み出すため「三大栄養素」と呼ばれています。どれも全く食べないと、体のバランスが崩れて不健康につながります。一方、炭水化物が多すぎると、体内で余分な糖質が中性脂肪に変わり、脂肪細胞に蓄積されて太ります。

キャベツを先に食べるのは良い方法だが…

脂肪を減らすには、炭水化物の量をいつもより控えめにしつつ食事の最後、つまり、肉類や魚類、野菜類でお腹がある程度満たされた後に、ご飯などを食べると食べ過ぎの抑制につながります。

「食事の最初にキャベツを食べて、減量につながっている人が何人もいました。キャベツを最初に食べてから食事をするのは、ひとつの良い方法だと思っています。ただし、キャベツだけに偏るのは止めましょう。いろいろな食材を食べることが、健康に役立ちます」

継続できる身体運動に取り組もう

すでにお腹周りなどについてしまった脂肪は、体を動かしてエネルギー代謝で減らすことも重要になってきます。

「根性でハードな運動をするようなことはお勧めしません。まずは休みの日も外に出る、スーパーまで歩くなど、目標は低めでよいので、長い期間継続できる身体活動に取り組みましょう」

膝への負担の少ない水中歩行やエアロバイクもお勧めです。

すでに膝が痛くて歩行が困難な場合は、整形外科を受診し、自己流ではなく治療で取り組むことが大切です。

「誤った方法は逆効果につながるので注意してください。治療によって、病的な肥満は正しく解消できることを知っていただきたいと思います」

解説
佐倉病院糖尿病内分泌代謝センター教授
齋木 厚人
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。