手術と化学療法を組み合わせ転移・再発防ぐ
早期で見つかった大腸がんは、腹腔鏡手術やロボット支援下手術などの「低侵襲手術」で切除するのが一般的である。だからこそ、異常に気づく前に、定期的に検査を受けるべきなのだ。
一方、術後の再発や転移を防ぐ目的で、手術と化学療法を組み合わせるケースもある。大腸がんの術前術後の化学療法について、聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座准教授の伊澤直樹医師の解説を元に検証する。
大腸がんの場合、転移先の臓器として代表的なのが、肺や肝臓である。たとえ転移があっても手術で切除できる場合は、可能な限り切除する。
大腸と肺であれば別に手術することになるが、肝臓の場合は同じ「消化器」ということもあり、大腸のがんと一緒に手術することもある。
近年は、この手術に化学療法や放射線治療を組み合わせることで、より効果的な治療を目指す症例が増えているという。
術前に放射線、化学療法を行うケース増加
「直腸がんで、腸壁へのがんの浸潤が進んでいる場合や、リンパ節転移が見られる場合などは、術前に化学療法や放射線治療を行ってから手術に進むケースが増えています」
治療順としては、まず放射線治療を行い、そのあとで化学療法を行うケースと放射線治療と化学療法を同時に行うケースがあるという。
「がんに“深さがある場合”や“リンパ節転移がある場合”は、まず5日間の放射線治療を行い、そのあとでカペシタビンとオキサリプラチンという2剤の抗がん剤を4カ月程度併用してから手術に進むケースや、1カ月半程度放射線治療とカペシタビンを併用してから手術に進むケースがあります」
放射線治療後、手術は最短でも3カ月
伊澤医師によると、放射線治療を行った後、十分な腫瘍縮小効果を示すためには放射線終了後から手術までの期間を空けることが重要だという。多くは放射線治療から手術までに最低でも3カ月は時間を置くことになる。
なお、術前の化学療法は直腸がんにのみ推奨されており、結腸がんには効果を示すエビデンスがないとのこと。
一方、術後の化学療法は、再発や転移の予防を目的に行われる。
術後の化学療法は3~6カ月
「現在はフルオロウラシルという点滴薬か、カペシタビンという経口薬のいずれかに、オキサリプラチンという点滴薬を組み合わせるのが、世界的に標準治療法となっています。術後の化学療法の期間はステージと病状によって異なりますが、3~6カ月程度行うのが一般的です」
その後5年間の経過観察を行い、再発転移がなければ「治療成功」となる。もちろんその後も年に1度の検診は必要だが、患者も医師も「ひと安心」となる。
このように、近年は根治を目的として化学療法がおこなわれるケースが増えている。
しかし、従来同様「手術ができない」という理由から化学療法がおこなわれるケースもある。