現代人の心臓は弱っている
人間に限らず、あらゆる動物が生きていくうえで最も重要な臓器「心臓」。心臓が動かなくなってしまえば、脳や肺や他のすべての臓器が健康でも、生きていくことはできない。そんな最重要臓器である心臓が、現代人は弱っている、と唱える循環器内科医が、「心臓力」を高めるために必要な知識を1冊の本にまとめた。
心臓病を回避するための生活術を解説
今回紹介する本は『100歳まで元気でいたければ心臓力を鍛えなさい』(かんき出版刊、1650円)。著者の大島一太氏=写真=は、大学病院で講師を務めながら開業医としても臨床に当たる循環器内科医。
「この30年で平均寿命は延びたけれど、健康寿命との差は縮まっていない。元気で健康な100年寿命を生き抜くために知っておいてほしい情報を紹介しようと考えました」と語る通り、心臓病を巡る日本の現状からさまざまな心臓病のメカニズム、そして心臓病を回避するための生活術が、エビデンスを元に解説されている。
心臓力を鍛える1日の過ごし方
たとえば第3章では、「心臓力を鍛える1日の過ごし方」が、朝・昼・夜ごとに紹介されている。深夜に食事をしない—など、簡単に実践できそうなコツが並ぶ(別項参照)。だが、すべてを確実にできている人は意外に少ないはず。
読み進むと、心臓力を高めるために必要なことは決して難しいことではないけれど、難しくないからこそ甘く見たり、後回しにしたりしている現実に気付かされる。
無症状で心臓はむしばまれる
「高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病は症状もなく忍び寄り、心臓や血管をむしばんでいきます。心臓力の低下は、何年何十年という生活の積み重ねの結果なのです」(大島医師)
たしかに、心臓疾患の多くは自覚症状がないまま進行し、取り返しのつかない状況に至って初めて発作、しかも激烈な痛みや苦痛を招くことになる。その時に普段の不養生を悔やんでも遅いのだが、人間は無症状ではなかなか真剣に取り組めない動物でもある。
寝たきりへの危機感呼び起こし「やる気」出させる
そこで、本書はエビデンスを根拠に訴えかけることで読者の危機意識を呼び起こし、真剣に取り組もうとする「やる気」を醸成させる親切設計なのだ。
100歳寿命と言っても、長い期間を寝たきりで過ごしたのでは本当の意味での「長寿」とは言えないだろう。幸せな長寿を実現するには、心臓力を高めることが必須であり、そのために必要な情報が本書には過不足なく収められているのだ。
「100歳を目標とするのではなく、通過点にするためにも心臓力は鍛えてほしい。そのためにご家族で回し読みしてもらえたらうれしいです」と大島医師はいう。
普段あまり心臓を意識することのない人は、この機会に真剣に勉強してみてはどうだろう。
心臓力を鍛える「夜の過ごし方」5つのススメ
- 深夜の食事に要注意! おやつは午後3時に
- お酒は血圧を高めない程度に
- 寒い浴室で熱いお風呂に入らない
- ぐっすり眠るために睡眠中央値(就寝から起床までのちょうど中間の時間)を決める
- 寝る前の水分の摂りすぎに注意