医療ランキング本のパイオニア
今年も『週刊朝日MOOKいい病院』(朝日新聞出版、1320円)の最新号となる2024年版が刊行された。全国の医療機関を対象にした独自調査から、疾患ごとの「手術数」を割り出す医療ランキング本のパイオニア的存在である。
毎回充実した読み物が並ぶ巻頭特集について、編集長の杉村健氏は次のように語る。
親ががんになった時、「子の立場でできること」を特集
「高齢の親ががんになったとき、親子で意見が食い違うケースもあるようです。今号では、子の立場でできることを特集しました。遠距離のときどうするか、医師に確認すること、親への寄り添い方などを専門家に取材しています。参考にしていただければ幸いです」
親と子とはいえ、そこには世代間の格差があり、場合によっては死生観も異なる。本書で紹介されている「実例」に、こんなケースがある。
母は積極的な治療をやめて自宅で過ごしたいと言っていたが、離れて暮らす兄が大反対。結局母は病院で亡くなり後悔が残っている—。
自分の親にこうした不幸な最期を迎えさせないためにどうしたらいいのかを、目を背けずに考えておくべきなのだ。
抗がん剤をやりたくない人に最新の化学療法紹介
別の特集「がんステージ4 抗がん剤はやりたくない」も読み手をひきつける内容だ。
ステージ4、つまりがんが転移するなどして「根治の見込みなし」と診断された患者の現実的な対応策を考察している。
教科書的には治療ガイドラインに沿った形で化学療法を進めていくべきだが、化学療法を嫌がる患者や家族は当然いる。
抗がん剤を怖がる患者の大半は、一昔前の「つらい副作用に苦しむだけの治療」の姿が頭から離れないでいるのだが、現在の化学療法は、そのあたりはだいぶ様変わりしている。
もちろん副作用はあるが、副作用を抑える支持療法(=がんそのものに伴う症状や、治療による副作用・合併症・後遺症による症状を軽くするための予防、治療、およびケアのこと)は進化している。多くの患者は通常通りの日常生活を送りながらの化学療法を実践しているのが現状だ。
患者と家族の意思を尊重する治療の考え方
とはいえ、当人が嫌がるのに無理に化学療法を強いるのも考えもの。そこで患者自身にとって「やりたいこと」に優先順位を付けてもらい、それを実現するために必要な治療を受けていく—というのが理想的だろう。
1年後の子供の入学式に出たい、という強い希望があれば、その希望をかなえるための治療には積極的になれるはず。
また、いろいろと説明を聞いたうえで、それでも化学療法が怖いという人には、「お試し」で抗がん剤治療を受けてみて、やはりつらいということであれば治療をやめることも可能だ。
一番よくないのは「抗がん剤治療を使うしかない」と決め付けることで、そのストレスが病気との相乗作用で患者を苦しめることを、家族としても知っておきたい。
病気になってからはもちろんだが、自分や家族が病気になる前に読んでおきたい特集が満載。「永久保存版」として役立ててほしい。
「ステージ4」の治療方針のポイント
- 転移を告げられた時は激しく動揺するもの。いったん頭と心をクールダウンしてから主治医と治療方針を検討する
- 転移後の治療は「いい状態で長生きすること」を目指す
- 治療はがんに対する積極的な治療(薬物治療)をするか否か
- 薬物治療を受けない患者も一定数いる
- 薬物治療をしなくても緩和ケアは必要に応じて続けられる
- 薬物療法を始めてみて、効果と副作用のバランス次第で続行か中止かを考えることもできる