骨粗鬆症 骨の健康を守る

骨の健康を守る(4)~血液と尿検査で骨質マーカーを調べる

骨の健康を守る(4)~血液と尿検査で骨質マーカーを調べる
予防・健康
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骨のカルシウムが保たれていても骨折!?

骨密度が低下した人は国内で約1560万人と推計されている。骨は大人になると成長が止まるが、新陳代謝を繰り返して、骨の量と質が維持され強度を保っている。しかし、加齢とともに再生する力が弱くなり骨の量が減少する。特に閉経後の女性は、骨の量が著しく減少して骨がもろくなる骨粗鬆(そしょう)症のリスクが上がる。

骨密度測定で平均値を下まわり、詳しい検査で骨粗鬆症と診断されると、骨のカルシウムが減らないようにする薬剤の「ビスフォスフォネート製剤」が投与されるのが一般的だ。しかし、骨のカルシウムが保たれていても、骨折してしまう人がいる。

骨粗鬆症健診の受診者は5%

「骨折のしやすさには、骨密度だけでなく、骨質(コラーゲン)の善しあしが関わります。骨折を防ぐためには、骨密度、すなわちカルシウムを高めることに加え、骨の質を規定しているコラーゲンの状態を改善させる治療が重要なのです。しかし、そもそも自治体の骨粗鬆症健診を受けている割合は約5%。約95%の人は骨の健康を無視しているといわざるをえません」

こう指摘するのは、東京慈恵会医科大学整形外科学講座の斎藤充主任教授。2006年に世界初の骨質マーカーと治療法を確立して以来、骨粗鬆症撲滅のため尽力している。

画像診断+AIで骨質調べられる

「骨粗鬆症の早期発見のためには、血液検査や尿検査で骨質マーカーを調べることが大切です。また、画像診断でも、AI(人工知能)の活用で骨のカルシウムや骨の質を調べる検査が可能です。これらの検査で、多くの人の骨を守りたいと思っています」

斎藤教授は、変形性膝関節症や変形性股間症における人工関節置換術も得意とし、整形外科領域の病気の患者を数多く救っている。その現場で目の当たりにするのが、骨がもろくなったことに気づかずに骨折した患者だ。

何度も骨折を繰り返して寝たきりになる人もいる。早い段階で適切な診断・治療を行うことの重要性を痛感し、その実現のために骨粗鬆症の新たな診断・治療法の研究と普及に力を注いでいるのだ。

糖尿病、慢性腎臓病、COPDの人は骨質が悪くなる

「骨質の低下、すなわちコラーゲンの劣化は、酸化ストレスとの関係が深いのです。糖尿病の人や慢性腎臓病の人、慢性閉塞性肺疾患の人などは、骨密度が高くても、骨質が悪くなることで骨折しやすいので注意が必要。骨質マーカーのひとつ、ペントシジンは、尿検査で簡単に調べることができます」

「ペントシジン」という老化物質は、骨のコラーゲンの劣化に関わる。血液もしくは尿の検査で、自分の骨質の劣化度を知ることが可能になってきた。現在、保険適応へむけて骨代謝・骨粗鬆症関連学会として取り組みを開始しているという。

「昨年9月から、富士通などと共同で、胸部X腺写真の活用による骨評価の研究をスタートしました。AIによってX線画像から骨の状態を評価できるシステムを活用しています。さまざまな検査方法は浸透させていますが、一般の方には、ご自身の骨にもっと関心を持っていただきたいと思います」

骨質を悪化させやすい身体状態

  • 血糖値を測るヘモグロビンA1c値が7.5%以上
  • 腎臓を調べる推算糸球体濾過量(eGFR)が、60㎎/dl以下
  • 慢性の咳や痰、労作時の息切れなどを伴う慢性閉塞性肺疾患(COPD)と診断された
  • 尿(血液)検査でペントシジンが高値
  • 生活習慣病と診断されている
  • 動脈硬化が進行中
解説
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授
斎藤 充
東京慈恵会医科大学整形外科学講座主任教授。同大附属病院整形外科・診療部長。1992年、慈恵会医科大学卒。2020年から現職。日本骨代謝学会理事、日本骨粗鬆症学会理事、日本人工関節学会理事などを兼務。骨代謝の診断・治療・研究で国内外をけん引している。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。