若い男女も骨盤底筋で悩み訴え
骨盤底にある泌尿器などの周囲にある骨盤底筋群の不調や悩みは人に相談しにくい。安倍弘和医師が所長を務める日本橋骨盤底診療所には、下腹部のトラブルで駆け込んでくる人が後を絶たないが、中高年ばかりではないという。近年、20~30代の男女が増加傾向にあるそうだ。その理由を安倍医師はこう語る。
骨盤筋筋膜性疼痛症候群(MPPS)とは
「骨盤筋筋膜性疼痛症候群(MPPS)はご存じでしょうか? この原因は内閉鎖筋(ないへいさきん)のコリが最多です。扇型で骨盤底筋の中でも広範囲幅を占め、膀胱(ぼうこう)に近くにある骨盤底筋で、股関節の筋肉でもあります。長時間ゆがんだ姿勢でいると負荷がかかりやすくコリが生じます。それが起点となり膀胱、子宮、膣、前立腺、肛門の痛みや不快感につながっている方が多いのです」
デスクワークでリスク増大
悪い姿勢によるデスクワークがリスクと考えられるという。
「これは今後、社会問題になる現代病だと思いますが、医療者にあまり知られていないため、男性は慢性前立腺炎、女性はGSM(閉経関連尿路性器症候群)と診断されてしまうことがあります」
どのようにして内閉鎖筋のコリが見つかるのだろうか。
「長時間のデスクワークで夕方になるほど陰部の不快感が強くなると訴える若年の方や、原因がわからずいろいろ治療して痛みが消えない方、残尿感や頻尿を気にしすぎと言われた方は、閉鎖筋のコリを疑います。診断は触診しかありません。女性は腟から、男性は肛門から指を入れて内閉鎖筋を触ります。コリがあると失神するほどの激痛が走ります。ただ、内閉鎖筋の疼痛は、膀胱、子宮、腟、陰部や下腹部の不快感や痛みとして感じるので、診断がやっかいなのです」
治療法は「コリをほぐす」
治療法は?
「女性は腟から、男性は肛門から指を入れて、内閉鎖筋のコリをほぐしていきます。片側5分程度で、両側の方もいます。座り姿勢のクセ、足の組み方で偏りがあります。同時並行で理学療法士がリハビリ指導で内閉鎖筋に負荷のかからない座り姿勢、動き方に正していきます。マッサージとトレーニングで、早い人は2カ月ほどで痛みがとれます。半年以上でも効果が出ない方は、体のクセでまたもとに戻ってしまうので、定期的に通院してもらいます。また、磁気刺激療法で効果がある方もいます」
肩こりや腰痛などと同様、内閉鎖筋痛もデスクワークをはじめ、ソファにもたれてゲームやスマホに長時間、興じていれば悪化する。
自分でコリをほぐす方法
自分でコリを確認して予防する方法を安倍医師に聞いた。
「座って骨盤横のポコっとした骨の内側をさすってみて、痛みが強いとコリがはじまっているサインです。長く座って仕事する人やドライバーはその部分を定期的にマッサージしましょう。姿勢は骨盤中間位といって、座骨で骨盤を起こして座り、お腹を伸ばした姿勢が良いです。立っていても骨盤を起こし、お腹を伸ばす意識を持ちましょう。スウェイバック(猫背)姿勢の改善につながります」
運動習慣がある人も骨盤底筋が整ってるとは限らないそうだから注意が必要だ。