抗アレルギー点眼薬とドライアイ用目薬を併用
日常的に目が乾燥してかゆみや不快感を持っている中、花粉症のシーズンを迎えると、アレルギー性結膜炎も併存して症状が悪化しやすい。その実態を昨年発表の論文で明らかにした順天堂大学医学部眼科学教室の猪俣武範准教授は、予防法をどう考えているか。
「花粉の飛散情報が流れる約2週間前から、花粉症におけるアレルギー性結膜炎に対しては、抗アレルギー点眼薬を使用するのが基本です。ドライアイを併発している人は、ドライアイ用の目薬も併用してください」
個人に応じて個別治療
猪俣准教授は、花粉症とドライアイで「P4医療」の実現を目指している。P4とは①予測医療、②予防医療、③個別化医療、④参加型医療の英語の頭文字をとったものだ(別項参照)。2016年に開始したドライアイ研究用スマホアプリ「ドライアイリズム」、18年開始の花粉症研究用スマホアプリ「アレルサーチ」をP4医療の実現に役立てているという。
「花粉症やドライアイの症状は千差万別です。個人の生活環境や体質、持病の有無などにも左右されるため、一律に提供する医療では限界があるのです。アプリによる多角的な解析研究で、個別化医療の実現につなげ、参画した患者さんの意見を取り入れることで、さらにより良いものになっていると感じています」
睡眠時間が6時間未満は併発しやすい
たとえば、花粉症やドライアイで目の症状を予防するため、点眼薬を使用することを第一選択肢としたなら、花粉症によるアレルギー性結膜炎の場合は、花粉防止メガネの活用や抗アレルギー薬の服用も同時に行うなど、対策はいろいろ考えられる。
猪俣准教授の研究結果で、睡眠時間が6時間未満の患者群は、花粉症によるアレルギー性結膜炎とドライアイが併発しやすかったという。
この場合は、花粉症シーズンに睡眠時間を6時間以上に伸ばすことも、予防の一助になる。
生活環境からリスク予測・予防に
このように、体質だけでなく生活環境などのリスク予測と予防のアドバイスが可能になるのも、「P4医療」の特徴である。
「マスクや花粉を防ぐメガネの着用、花粉が付きにくい素材の服装など、花粉の曝露を防ぐのは基本ですが、人によって発症リスクや重症化リスクが異なります。P4医療の実現で、その人に合った治療法や予防法を提供したいと思っています」
猪俣准教授の研究では、「コンタクトレンズの花粉症シーズン中の使用」などもリスク因子になっていた。「自分の眼にとってよくないことはなにか」を考えて、なるべくリスクは避けるのが基本となる。医師のアドバイスのもと、自分なりの対策を立てて予防し、花粉症シーズンをうまく乗り越えていきたい。
猪俣武範准教授が目指すP4医療
P4とは、①予測医療(predictive)、②予防医療(preventive)、③個別化医療(personalized)、④参加型医療(participatory)のこと。アプリで収集したビッグデータを解析し、個人に合った治療や予防法を提供する。投薬に限らず、生活習慣や住環境などのライフスタイルにもアプローチすることで、より適した予防につなげる。