目(眼科) 花粉症 花粉症とドライアイ対策

花粉症とドライアイ対策(1)~性別や事業、生活環境で併存リスク上昇

花粉症とドライアイ対策(1)~性別や事業、生活環境で併存リスク上昇
予防・健康
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今シーズンは例年並みだが…

花粉症の時期がついに来てしまったとお嘆きの人は多いだろう。今シーズンは例年並みの花粉の飛散量と予測され、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりといった鼻症状に加え、目のかゆみや充血などの花粉症によるアレルギー性結膜炎にも注意が必要だという。

花粉症に追い打ちかけるドライアイ

そして、この時期、花粉症に追い打ちをかける“目の大敵”がある。パソコンやスマートフォンの長時間操作による眼性疲労やドライアイに要注意だ  。なぜなら、ドライアイに花粉症を合併すると目の症状は相当ひどくなるからだ。この併発リスク因子を解き明かし、適切な治療と予防の道筋をつけた順天堂大学医学部眼科学教室の猪俣武範准教授に話を聞く。

かゆみ、充血、炎症の重複で悪化

猪俣准教授は、ドライアイの診断・治療・研究を数多く行ってきた。加えて、同大大学院医学研究科AIインキュベーションファーム、デジタル医療講座、ならびに遠隔医療・モバイルヘルス研究開発講座准教授を併任するなど、デジタルやAI(人工知能)の知識も豊富。

その経験を活かし、2016年にドライアイ研究用スマホアプリ「ドライアイリズム」、18年に花粉症研究用スマホアプリ「アレルサーチ」を開始している。

「花粉症とドライアイは、かゆみや充血、炎症などの症状が重複し、併存することで悪化します。しかし、花粉症とドライアイは診療科が異なり、実態を調べることが難しかったのです」

花粉症は耳鼻科、ドライアイは眼科…診療科が異なる

ドライアイの診断・治療は眼科で行われるが、花粉症の場合は、耳鼻咽喉科やアレルギー科。花粉症によるアレルギー性結膜炎で重症化している人の眼で、ドライアイの併存が見過ごされている可能性があったのだ。

その実態と併存リスク因子を明らかにすべく、猪俣准教授らは、個人の環境や生活習慣、疫学的な要因なども含む「アレルリサーチ」のビックデータを解析。すると、花粉症患者の約半数にドライアイの症状が認められ、ドライアイの重症化と花粉症との関連がわかった。同時に、併存するリスク因子も明らかになった。

併存する人は女性の可能性が高い

「今回の研究では、花粉症患者のうち、ドライアイを併存する人は、そうでない人と比べて女性である可能性が高いなど、特徴を示すことができました。リスク因子がわかれば、当然のことながら、予防に役立ちます」

この研究では、高血圧の治療を受けた患者は、高血圧の治療を受けていない患者よりも、ドライアイの併存率が高いなど、さまざまなリスク要因があった。

睡眠時間、コーヒー摂取量も関係

1日あたりの睡眠時間が6時間以下、コーヒー摂取量が少ないなど、生活習慣も花粉症とドライアイの併存リスク要因になっていた。

「個人によって性別、持病、生活環境によって、併存リスクが上がります。一般の方には、併存のリスク因子があることを理解し、予防も一律ではないことをご理解いただきたいと思います」

花粉症シーズンに突入した今、目の重症化を防ぐためには、ドライアイもしっかりケアしなくてはいけないのだ。

花粉症とドライアイ主な併存リスク因子


  • 心臓病、肝臓病、呼吸器の病気を持つ人
  • アトピー性皮膚炎
  • トマトアレルギー
  • ペットの飼育
  • コンタクトレンズの装着(装着中断歴も含む)
  • 女性であること

※ドライアイと花粉症の併発による症状と、併発するリスク因子を解明(順天堂大リリースから)
 

解説
順天堂大学医学部眼科学教室准教授
猪俣 武範
順天堂大学医学部眼科学教室准教授。医学博士。2006年、順天堂大学医学部医学科卒。2012年、ハーバード大学医学部スケペンス眼研究所へ留学。留学中にボストン大学経営学部でMBA(経営学修士)取得。2019年から現職。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。