糖尿病 ウォーキング がん、認知症、糖尿病遠ざける「1日1万歩」

がん、認知症、糖尿病遠ざける「1日1万歩」(2)~プラス2000歩で糖尿病発症リスク12%減

がん、認知症、糖尿病遠ざける「1日1万歩」(2)~プラス2000歩で糖尿病発症リスク12%減
予防・健康
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1万歩は糖尿病にも効果

摂取カロリーより消費カロリーを上回らせて肥満を防ぐため、統計的に見て死亡率を下げるため、そして効率的なウオーキングにするため—という根拠から「1日1万歩」のウオーキングを勧めるのは呼吸器内科を専門に幅広い医療の執筆活動でも知られる大谷義夫医師です。1万歩の取り組みは、糖尿病の予防にも効果を示すといいます。その理由を詳しく解説してもらいます。

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現在、国内で糖尿病が強く疑われる人は約690万人います。いわゆる予備軍を含めるとその数は約1370万人に上るとされ、まさに「国民病」といえるほど猛威を振るっているのです。

中でもインスリンの分泌が減ったり、インスリンは出るものの本来の作用を示さない「2型糖尿病」は、過食、運動不足、肥満が三大要因とされています。

予防・改善にウオーキングは最適

そんな糖尿病の予防と改善に、特にウオーキングは効果を示すことが知られています。

米カリフォルニア大学サンディエゴ校で行われた、約5000人の高齢女性を対象にした興味深い調査があります。それによると、1日の歩数が2000歩増えると糖尿病の発症リスクが12%低下し、そのウオーキングが「少し汗をかくような速さ」だと、糖尿病の発症リスクの減少率は14%まで高まることが明らかになったのです。

「食事療法+運動療法」で改善

そもそも糖尿病になってしまった人の治療を見ると、食事療法と運動療法の組み合わせが基本です。そこで「食事療法+運動療法」を行うグループと、「食事療法のみ」のグループで比較した調査が、順天堂大学の研究チームによって行われています。

すると「食事療法+運動療法」のグループは、異所性脂肪である筋肉内脂肪が19%減少し、インスリン感受性は57%増加する—という改善報告がされているのです。

もう一方の「食事療法のみ」のグループは、筋肉内脂肪もインスリン感受性にも変化は見られませんでした。

恐ろしい「異所性脂肪」

ここでいう「異所性脂肪」とは、皮下組織にたまる「皮下脂肪」や、腸の周囲に取り付いてメタボリックシンドロームの原因となる「内臓脂肪」とは異なり、本来たまるはずのない場所にたまる中性脂肪のこと。

肝臓にたまればNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)の、心臓周囲に溜まれば心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患の原因となる恐ろしい病態です。

糖尿病は様々な病気の温床

糖尿病は、その先に網膜症や腎症、神経障害などの合併症があることはよく知られています。さらに動脈硬化や血管障害、各種感染症や骨粗しょう症など、さまざまな病気の温床となります。

その予防と治療効果にウオーキングが大きな役割を果たしていることを考えると、「歩かない」という選択はないはず。

ぜひ「1日1万歩」を目指して、歩き始めましょう!
 

解説
池袋大谷クリニック院長
大谷 義夫
池袋大谷クリニック院長。群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院、九段坂病院、国立がん研究センター中央病院などに勤務。米ミシガン大学留学を経て東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授。2009年から現職。医学博士。近著に『1日1万歩を続けなさい 医者が教える医学的に正しいウォーキング』(ダイヤモンド社刊)。
執筆者
医療ジャーナリスト
長田 昭二
医療ジャーナリスト。日本医学ジャーナリスト協会会員。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒業。医療経営専門誌副編集長を経て、2000年からフリー。現在、「夕刊フジ」「文藝春秋」「週刊文春」「文春オンライン」などで医療記事を中心に執筆。著書に『あきらめない男 重度障害を負った医師・原田雷太郎』(文藝春秋刊)他。