ダイエット ウォーキング がん、認知症、糖尿病遠ざける「1日1万歩」

がん、認知症、糖尿病遠ざける「1日1万歩」(1)~歩数にこだわる3つの理由

がん、認知症、糖尿病遠ざける「1日1万歩」(1)~歩数にこだわる3つの理由
予防・健康
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世界中で発表された論文を検証し、「1日1万歩」を歩き続けることでさまざまな健康効果が得られることをまとめた本が昨秋、刊行され話題を呼んでいます。『1日1万歩を続けなさい 医者が教える医学的に正しいウォーキング』(ダイヤモンド社刊)の著者で呼吸器内科医・大谷義夫医師に、毎日1万歩を歩くことで得られる健康効果を、「根拠」を示しつつ解説してもらいます。

なぜ「1日1万歩」か?

まず、「なぜ1日1万歩」なのか。

歩くことが健康にいいことは皆さんもご存じのとおりです。でも、毎日どれくらい歩けばいいのか—となると、諸説あって混乱を招きます。

でも、私は明確に「1日1万歩」という数字を提示します。ぜひ皆さんにも毎日1万歩を目標に歩いてほしいのです。

堂々と宣言する背景には、大きく3つの理由があります。今日はその3つの理由を紹介します。

理由1:余分な300キロカロリーを消費すれば太らない

人がなぜ太るのか—といえば、消費カロリーより摂取カロリーが多いから。言い換えれば、摂取カロリーより多くカロリーを消費すれば太らないのです。

日本人成人男性の1日あたり平均摂取カロリーは約2200キロカロリー。これに対して平均消費カロリーは1900キロカロリーと、300キロカロリーが「余剰」となり、脂肪に回されているのです。

ではどうすれば「余った300キロカロリー」を消費できるのか…。それが1日1万歩のウオーキングなのです。

厚生労働省が主導する「健康日本21」という健康づくりの取り組みでも、週2000キロカロリーを消費する運動を勧めており、まさに「1日1万歩」に合致するのです。

理由2:歩けば歩くほど死亡率が下がる

1日あたりの歩数と死亡率の関係を調べた興味深い研究があります。アメリカ国立がん研究所の研究グループが行った調査で、1日あたりの歩数が4000歩より8000歩、8000歩より1万5000歩のほうが死亡率が低く、それでいて1万歩と1万5000歩の死亡率の差はわずかでした。この調査結果により、「1日1万歩」の優位性が浮き彫りになったのです。

理由3:「時間」より「歩数」を目安にしたほうが効果が出る

1日30分のウオーキングを提唱する意見を耳にした人もいると思います。でも私は、あえて「歩数」にこだわりました。じつはこれも根拠があるのです。

「歩数」と「時間」のいずれかを目安にウオーキングを続けたそれぞれのグループの健康効果を比較検討する調査がカナダで行われました。

これによると、「歩数」のグループは血糖値の改善効果が見られたのに対して、「時間」のグループはそうした効果は見られなかったとのこと。「時間」を目安にすると、ちんたら歩いてしまう危険性があります。やはりウオーキングは「時間」よりも「歩数」を目安にするほうが合理的なのです。

こうしたことを背景に私は「1日1万歩」を勧めています。明日からは具体的な疾患を挙げて、歩くことがその改善効果を持つことを解説していきます。

解説
池袋大谷クリニック院長
大谷 義夫
池袋大谷クリニック院長。群馬大学医学部卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院、九段坂病院、国立がん研究センター中央病院などに勤務。米ミシガン大学留学を経て東京医科歯科大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授。2009年から現職。医学博士。近著に『1日1万歩を続けなさい 医者が教える医学的に正しいウォーキング』(ダイヤモンド社刊)。
執筆者
医療ジャーナリスト
長田 昭二
医療ジャーナリスト。日本医学ジャーナリスト協会会員。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒業。医療経営専門誌副編集長を経て、2000年からフリー。現在、「夕刊フジ」「文藝春秋」「週刊文春」「文春オンライン」などで医療記事を中心に執筆。著書に『あきらめない男 重度障害を負った医師・原田雷太郎』(文藝春秋刊)他。