きょうからできる「減塩対策」
国内の高血圧患者数は推計で約4300万人。ところが、「高血圧症」で通院している人は1724万人に過ぎません(厚生労働省2022年『国民生活基礎調査』)。高血圧の状態を放置すれば、当然のことですが心筋梗塞や脳卒中、さらには腎不全などにつながります。
高血圧が原因で重篤な病気にならないためには、適切な治療を受けると同時に食生活の見直しが欠かせません。その第1歩が「減塩」です。この連載では、高血圧に詳しい東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科の常喜信彦教授に、「きょうから実行できる“減塩法”」を伺います。
血圧と塩分の関係は?
そもそも血圧とは何でしょうか。心臓が収縮して血液を押し出したときの血管にかかる圧力(収縮期血圧)と、心臓が拡張したときの大動脈から流れる血液の圧力(拡張期血圧)を測定したものです。日本高血圧学会では、診察室の測定で収縮期血圧140㎜Hg以上/拡張期血圧90㎜Hg以上が高血圧と定めています。では、塩分と血圧はどう関係しているのでしょうか。
「われわれの体は、血液のナトリウム濃度(浸透圧)を一定に保つように、常に制御されています。塩分の成分のナトリウムの血液濃度が上がると、血液の量すなわち水分を増やして薄めるように働きます。簡単にいえば、血液量が増えるので血管への圧力が強くなり、心臓の収縮力も高まることで血圧が上がるのです」
塩分を1グラム減らすだけで血圧が下がる!?
こう説明する常喜教授は、慢性腎臓病や腎不全の治療を数多く行い、それに関連した血圧の治療にも精通しています。
「仮に1日10グラムの塩分をとっていた人が9グラムに減らせば、ナトリウムを薄める血液量が減るので、血圧も下がる可能性があるのです」
厚労省の2019年「国民健康栄養調査」によれば、日本人の食塩摂取量の平均値は10.1グラム。10年前の調査と比べて約0.6グラム減少しています。一方、同調査の血圧も、140㎜Hg以上の割合が減少していました。
国の減塩目標はより厳しく「7グラム」に
ただし、21世紀における国民健康づくり運動「健康日本21(第2次)」の減塩目標値1日平均値8グラムには届いていません。2024年4月施行の「健康日本21(第3次)」では現在より厳しくなり、減塩目標値1日平均値7グラムが掲げられます。平均値で言えば10.1グラムの塩分摂取を1日平均約3グラム減らすことが求められているのです。
「『健康日本21次(第3次)』の目標を達成できれば、多くの人も高血圧を改善することが可能になります。しかし、誰もがすぐに達成できるかといえば、3グラムを減らすのは難しい。まずは1グラムでも、毎日減らす意識を持つことが大切です」
たとえば、昼食に食べるラーメン。食塩が5~6グラムだった場合、スープを多めに残すと、1~2グラムは食塩を減らすことが可能です。
「食品や料理に食塩がどのくらい含まれるか。まずは意識することから始めましょう」と常喜教授はアドバイスしています。