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推し活で健康になる(2)~ファン同士の共感、会話が脳の健康を維持する

推し活で健康になる(2)~ファン同士の共感、会話が脳の健康を維持する
エイジングケア
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運動とコミュニケーションが脳の健康にイイ

ひいきのアイドルや俳優などを全力で応援する、いわゆる「推(お)し活」がもたらすワクワクする気持ち、幸福感は、じつは脳の健康につながるのではないか。その可能性について、東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授が紐解きました。

脳の健康の維持のために必要な要素として、瀧教授はふたつのポイントを挙げます。

「まずは運動です。軽くでいいので運動を習慣化させること。運動以外の趣味もそうですが、できればスポーツや音楽をテレビや動画などで観戦、鑑賞するだけでなく、実際に体を動かしてみること、運動したり楽器演奏や歌うなど能動的な行動が伴うと、よりいいとされます」

「もうひとつ、脳にとって大切なのは、会話やコミュニケーションです。このようなコミュニケーションの際には、自分だけが一方的に発するのではなく、相手の表情や反応を見て自分がどう対応すればいいかを考えますよね。そうすることで常に共感性、社会性を意識することになり、非常に脳を使うことになります」

ライブ会場で仲間と情報交換、共感・社会性高まる

推し(ひいきのアイドルや俳優)に会いに行くために会場に足を運んだり、時には歌ったり踊ったりと体を使う場面も少なくないでしょう。そして、「推し活」は、情報交換など、それこそ仲間とのコミュニケーションによって共感性、社会性が必要となることも確かです。評論家の大森望氏は「ライブの盛り上がりを体感することで、ドーパミンなどの神経伝達物質が分泌されると思います」と語ります。メリットが重なり合います。

一方、SNSやネット上でのファンの掲示板などでのやり取りも、これら会話やコミュニケーションの範疇(はんちゅう)に入れることができるのでしょうか。

「会話というのは、本質的には言語的な情報なのですが、実は相手の表情やしぐさなどの非言語的な反応が一番情報量が多いと思われます。ウェブでのやり取りは、その反応も基本的に文字情報、言語としての情報となり、非言語的な情報が消えてしまいます」

ワクワク感、精神的幸福感、行動と共感…

可能であれば、脳の健康のためには、ライブ会場などの現場に足を運び、リアルなコミュニケーションを心がける「推し活」ライフがより効果的だと考えられそうです。

「推しによってもたらされるワクワク感、精神的幸福感。そして推しに会いにいくために足を運んだり声を出したりする実際の行動、コミュニケーション…悪いところを見つけるのが難しいのではないでしょうか。強いて(欠点を)あげるなら、お金がかかることがあるといったところでしょうか(笑)」(瀧教授)

もちろんこれら実際の推し活を行うことが難しい環境にある人もいるでしょうが、気にすることはないと瀧教授は言います。

「推しがいるということ、推しのことを考えるだけで日々のうるおい、幸せを感じることは十分できますから」

過度にのめり込まず、あくまでも穏やかに推し活を楽しめば、脳の健康を手に入れることがグッと近づきそうです。

解説
東北大学加齢医学研究所教授、医師
瀧 靖之
東北大学加齢医学研究所教授。医師。医学博士。東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。同研究所および東北メディカル・メガバンク機構で大規模脳画像データベースを用い、どのような生活習慣が脳の加齢を抑えるかを明らかにしてきた。主な著書に『回想脳 脳が健康でいられる大切な習慣』(青春出版社)『生涯健康脳になるコツを教えます!』(廣済堂出版)など。
執筆者
ライター
太田 サトル
ライター、編集、インタビュアー。週刊誌でのライター活動を学生時代にスタート。現在はウェブや雑誌などで健康、文化、エンターテインメント記事やインタビューなどを主に執筆。