腰痛になる前に運動の習慣化を
国内で腰痛に悩まされている人は約1248万人。厚労省の2022年「国民生活基礎調査」の有訴者率では、男女ともに腰痛が第1位になりました。特に中年期以降、加齢に伴い、骨と骨の間の椎間板などが老化し、変性することで腰痛につながります。また、冬場は冷えて血行が悪くなり、年末年始に重い荷物を持って腰に大きな負荷をかけるなど、腰痛につながるような状況が増える時期でもあります。
「加齢に伴う腰痛の予防では、日頃からの運動習慣が欠かせません。腰痛予防の運動としては、太極拳やヨガ、水泳の背泳ぎ、ドイツ生まれのエクササイズ・ピラティスなどがお勧めです。腰痛になる前に、ぜひ運動を習慣化していただきたいと思います」
こう話すのは、NTT東日本関東病院整形外科の山田高嗣部長。背骨の病気の診断・治療を得意とするエキスパートで、数多くの腰痛患者さんを救っています。
腰痛の原因は弱い背筋、鍛える簡単な方法は
「加齢に伴って腰痛が強くなる人は、背筋が弱くなりがちです。背筋が弱いと前屈みの姿勢になりやすく、背骨に大きな負荷がかかり腰痛につながりやすくなります。スマートフォンの長時間操作なども前屈みの姿勢を後押しします」
背骨は24個の骨で成り立ち、体重の約10分の1の重さの頭を支えています。背筋が弱い、あるいは、前屈みの姿勢でいると、背骨には大きな負荷がかかることになるのです。
- 背筋を鍛える方法はいろいろありますが、簡単な方法は次のとおりです。
- 背筋を伸ばし、両腕を前方にまっすぐ床と並行に伸ばす
- 息を吐きながら両肘を曲げて体の方へ引き寄せる
- 肩甲骨を寄せながら背中の方まで肘を引っ張るようにする
- ゆっくりと両腕を前方に伸ばす
- (1)~(4)を10回繰り返す
「ちょっとした空き時間に取り組む習慣が大切です。私自身、日々の診療や部下の指導が忙しく、平日はわざわざジムなどに通う時間を作ることができない方もいるでしょう。そのため、背筋を伸ばして姿勢を正すこと、腹筋と背筋を意識してお腹をへこますことを、日常生活で習慣化しています」
姿勢とお腹を意識すると自然に腰を守れる
正しい姿勢の立ち方は、横から見たときに、耳の後ろから足のくるぶしまで、地面から一直線になっている状態です。猫背、お腹や胸を突き出すような姿勢はよくありません。鏡を見たり、ご家族に姿勢をチェックしてもらいましょう。その状態で、下腹部に力を入れてへこませると、腹筋などを鍛えることが可能です。
「姿勢とお腹をへこますことを意識していると、自然に腰を守ることにつながります。長時間立った状態の手術を行っても、腰痛にはなりません」
わざわざ運動するのは面倒でも、歯磨きやお化粧をするように、正しい姿勢や腹筋&背筋の強化を習慣化するだけで、腰痛予防につながります。習慣化こそが重要なのです。
「更年期から腰を守っていると、将来の腰痛を予防し、健康寿命の延伸につながります。健康寿命とは、寝たきりなどにならず、自立した生活を過ごせる期間を指します。ぜひ日々の習慣で健康寿命を伸ばしていただきたいと思います」