更年期に骨と筋肉弱くなり腰痛発症
更年期で女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、骨が弱くなり筋肉量も減少し、腰痛を引き起こしやすくなります。また、代謝が落ちて体重が増えると、体重の3~5倍の圧力が腰の骨にかかるため、やはり腰痛につながります。
「腰の変性を招きやすい状態を放置していると、更年期以降に腰椎変性すべり症を引き起こします。女性は、腰椎変性すべり症になりやすいので注意しましょう」
こう話すのは、NTT東日本関東病院整形外科の山田高嗣部長。背骨の病気の診断・治療を得意とし、腰椎変性すべり症の手術も数多くこなしています。
腰椎変性すべり症とは
「腰椎変性すべり症は、初めはなんとなく腰が痛くなり、その痛みが出たり、消えたりしながら進行していきます。単なる腰痛と考えているうちに、脚のしびれや痛みも伴うようになり、上手く歩けなくなるのです」
背骨は24個の骨から成り立ち、そのうち5個が腰の骨(腰椎)です。骨と骨の間にはクッションの役割をしている椎間板がありますが、加齢や更年期の体の変化、さらには、筋肉量の減少などで変性が進んでいきます。
椎間板のクッションとしての機能が低下することで、本来は規則的に連なっていた腰椎の骨がずれるのです。背骨の中には神経が通っているため、腰椎の骨の位置がずれると神経に悪影響を及ぼします。それが、痛みやしびれとなって現れます。
男性は腰部脊柱管狭窄症起こしやすい
「神経の通り道を脊柱管といいます。椎間板が変性して骨棘(こつきょく )という骨のトゲなどが生じ、神経に悪影響を及ぼす腰部脊柱管狭窄症は、男性に発症することが多い。一方、骨棘ではなく、腰椎の骨のずれが原因で、同じ症状を引き起こすのが腰椎変性すべり症なのです」
たとえば、歩き始めると脚のしびれや痛み、脱力などが起こり、前屈みになってしばらく休んでいると痛みが和らぐのは、腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状のひとつです。腰椎変形すべり症も同じ症状を引き起こすため、腰部脊柱管狭窄症の一種ともいえます。ただし、一般的な腰部脊柱管狭窄症と腰椎変性すべり症の治療は異なります。神経を圧迫している原因が違うからです。
腰椎変形すべり症の手術は大がかり、筋トレとダイエットで予防を
「主に骨棘が飛び出して神経を圧迫している場合は、小さな切開の内視鏡手術で骨棘など神経を圧迫しているものを取り除くことが可能です。腰椎変形すべり症は、ずれた腰椎の骨を正しい位置に戻し、ボルトで固定しなければなりません。内視鏡手術だけでは行えません」
腰部脊柱管狭窄症よりも、腰椎変性すべり症の方が、大がかりな手術になるのです。それだけに予防が大切。腰部脊柱管狭窄症も、腰椎変性すべり症も、背筋や腹筋といった腰の骨を支える筋肉を養い、腰に負荷のかかる体重増加を改善させるなど、予防は共通しています。いずれにしても、腰を痛めやすい更年期前から予防に励むことがなにより大切になります。
「中には、腰痛はマッサージで楽になると思い、自己判断で放置している方もいます。しかし、乳がんの骨転移で腰痛になっていたというケースもありました。腰痛は原因を知った上で正しく対処していただきたいと思います」
腰痛が繰り返して起こる、あるいは、脚がしびれて痛むときなど、症状が続くときには整形外科へ。まずは原因を確かめましょう。