寒暖差+肥満症でリスク大
気候の寒暖差によって血管に負担がかかり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まっています。発症する人とそうでない人の違いにはワケがあり、その要因のひとつに肥満があるといいます。肥満の人は新型コロナウイルス感染症でも重症化するケースがありましたが、脳梗塞などの血管病にもかかりやすいのだそうです。
「単なる肥満は病気ではないのですが、体格指数(BMI)25以上で11種の疾患の一つ以上を合併して、内臓脂肪蓄積の人は、肥満症と診断されます」と説明するのは、肥満治療のエキスパートとして知られる、結核予防会総合健診推進センター所長の宮崎滋医師です。
11種の疾患には、高血圧症、糖尿病、脂質異常症があります。これらの病気を原因とした脳梗塞・一過性脳虚血や心筋梗塞・狭心症なども11種に含まれています。「体重が増えると血糖、血圧、脂質などが上昇します。これを放置すると、動脈硬化が進行して、脳梗塞や心筋梗塞の前段階になります」(宮崎医師)
食事はトマト、タマネギ、青魚、大豆を意識
どのような食事を心掛けたら防げるのでしょうか。
「ふだんの食事で塩分を摂りすぎていないか、野菜をしっかり摂っているか改めてチェックすることが大切です」と宮崎医師は言います。おせち料理は塩分過多の定番で、カマボコなどの練り物に多く含まれています。食べ過ぎないよう注意が必要です。
野菜では、抗酸化作用のある色素リコピンを含むトマト、血液の凝固を防ぐタマネギがお勧め。血液をサラサラにする青魚(DHAやEPAを含む)、納豆や豆腐など大豆食品も日ごろから摂っているかチェックしましょう。
短鎖脂肪酸を生み出すビフィズス菌と水溶性食物繊維
一方、動脈硬化の予防に新たな選択肢が増えそうな注目すべき研究成果が発表されました。短鎖脂肪酸を多く生み出すビフィズス菌と水溶性食物繊維を摂ることが、血管の柔軟性にどのように作用するかを調べたものです。
この研究は江崎グリコが実施。血管の柔軟性が低下している健常者、40~60歳の男女60人を、同社独自のビフィズス菌と水溶性食物繊維を含んだ乳飲料を摂取するグループと、プラセボ(偽)の乳飲料を摂取するグループに分け、比較しました。
その結果、血管拡張反応を示すFMD値は、前者のグループでプラスになり、血管拡張が認められましたが、プラセボのグループはマイナスになりました。このほか、動脈硬化に関係する悪玉LDLコレステロール値でも、前者のグループはマイナスになり、改善が示されましたが、プラセボのグループはプラスになりました。
「短鎖脂肪酸を多く生み出す当社独自のビフィズス菌と水溶性食物繊維を摂ることによって、血管の柔軟性の改善が期待されることが示されました」と同社広報担当者。
同社による短鎖脂肪酸に関する研究では、肥満予防や認知機能にも役立つことが期待されることも分かりました。同社は、「短鎖脂肪酸を生み出す菌や食材を継続して摂ることが重要」として、ヨーグルトソースを使ったパンケーキなど「タンサ活レシピ」をホームページなどで紹介しています。
宮崎医師は、肥満を予防することは動脈硬化の予防につながるとして、そのためには「多様な食べ物をバランスよく摂取することが大切」と助言します。気温の寒暖差はただでさえ、体調を崩しやすくなります。脳梗塞や心筋梗塞で倒れないために食事にもいっそう気を付けましょう。
宮崎滋(みやざき・しげる)
結核予防会総合健診推進センター所長。東京医科歯科大学医学部卒。同大学臨床教授、東京逓信病院副院長、新山手病院生活習慣病センター長を歴任し、2015年より現職。日本肥満症予防協会副理事長。