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この冬、脳・心筋梗塞に最大警戒を(2)~寒さと外食・塩分過多で単身赴任の夫が危ない

この冬、脳・心筋梗塞に最大警戒を(2)~寒さと外食・塩分過多で単身赴任の夫が危ない
予防・健康
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寒暖差が大きいほど血圧の変動は大きく

今年は秋から厳しい寒暖差がありました。11月7日、東京都心は最高気温27.5度。11月の最高気温を100年ぶりに更新しました。12月に入り寒さが増しても合い間に暖かい日が続いています。これにより体調不良を訴える人が続出。重篤な病気に発展することも心配されています。

「例年、冬になると、脳梗塞や心筋梗塞の発症数が増えます。今年の冬は寒暖差が激しいので、血圧の変動による血管への負担は一層大きくなり、これらの発症数は例年よりも増える恐れがあります」と語るのは、平成横浜病院センター長で東邦大学名誉教授の東丸貴信医師。寒暖差の直撃を受けやすいのが、以前から動脈硬化が進行していたシニア世代の男女だといいます。

寒さの影響で血管はどうなるのか。「寒くなると、全身の血管が収縮するので、血管の内部が狭くなり、血圧が上がります。寒暖差が大きいほど、血圧の変動が大きくなります。高血圧症などで動脈硬化が進んで血管が傷んでいる人は、急激な血圧の変動に耐えられず、血管が詰まるなどして、脳梗塞や心筋梗塞を起こしてしまうのです」(東丸医師)

気温の上下で脳卒中リスク増

胸部大動脈石灰化は軽度で冠動脈の石灰化なかったが…。画像下(矢印の先)には右側の脳梗塞の痕がある

気温の変化と発症の関係は、研究データでも裏付けられています。広島大学の研究グループは2012年から13年にかけて、脳卒中(脳梗塞など)で入院した日本人3935人について、発症の日と発症前1週間の気温を調べて、脳卒中リスクとの関係を分析しました。発症の前日よりも気温が上がった日、あるいは下がった日は、脳梗塞の発症リスクが約1.2倍になることがわかりました。

 

 

 

冬に脳梗塞で倒れた例を紹介しましょう。横山一郎さん(仮名、80代)はかつて北海道に転勤中の冬、脳梗塞で倒れました。主たる脳梗塞は右大脳にあり、ほかに陳旧性(ちんきゅうせい=過去に発症した跡)の小梗塞も散在していました。

 

「普段から上の血圧は140~150㎜Hgと高めでした。それが道内の寒さで血圧が急上昇して脳梗塞に至ったと思われます」と横山さんのフォローアップを診察している東丸医師は言います。発症要因は寒さだけではありません。単身赴任で外食が多く、飲酒量も増え、脂質や塩分制限が緩くなっていたといいます。

 

 

毎日血圧を測り、自分の上下推移・変動を知る

横山さんについて「複数の生活習慣病があり、脂質低下薬と降圧薬を服薬していました。しかし、徐々に全身の血管の動脈硬化進み、動脈硬化巣の一部が不安定化して、血栓が生じたものと考えられます。血圧のコントロールをしていても生活習慣病が複数重なると、動脈硬化は進みます」と東丸医師は語ります。

幸い、横山さんは一命を取りとめました。「左の半身麻痺が後遺症としてありますが、単身赴任先で死んでいたらと思うとぞっとします。体を過信していました。80代は健康第一に過ごして長生きをしたい」と話しています。

血圧の急上昇による、脳梗塞や心筋梗塞を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?

「シニア世代の人にお勧めしたしたいのは、毎日、歯磨きをするように血圧を測り、自分の血圧の上下の推移と変動を知ることです」と東丸医師。血圧計はそんなに高価なものではありません。持ってない人はこの際、自分へのプレゼントに1台購入するべきでしょう。

解説
医師、平成横浜病院
東丸 貴信
1978年、東京大学医学部を卒業。日赤医療センター循環器部長、東邦大学医学部教授を経て、2017年から平成横浜病院総合健診センター長。汐留シティセンターセントラルクリニックでは非常勤で診察。東邦大学医学部名誉教授。
執筆者
医療ライター
佐々木 正志郎
医療ライター。大手新聞社で約30年間、取材活動に従事して2021年に独立。主な取材対象はがん、生活習慣病、メンタルヘルス、歯科。大学病院の医師から、かかりつけ医まで幅広い取材網を構築し、読者の病気を救う最新情報を発信している。医療系大学院修士課程修了。