認知症 ここまできた認知症予防

ここまできた認知症予防(2)~物忘れが気になり始めた親に勧めたい「健脳カフェ」とは?

ここまできた認知症予防(2)~物忘れが気になり始めた親に勧めたい「健脳カフェ」とは?
予防・健康
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認知症が気になり始めた人が若者と交流

アルツハイマー病では、異常なタンパク質「アミロイドβ」が15~20年かけて脳内に溜まることで認知機能が低下する。先頃、治療薬レカネマブが承認されたが、根本的な治療法はこれからで、発症や進行を遅らせることが肝心だ。世界保健機関(WHO)でも生活習慣病の管理や運動、社会的な交流を推奨。国内でも予防のための取り組みが始まっている。

都内のビル内にある「健脳カフェ」(東京都新宿区)と銘打った交流スペースを訪れると、男女15人が集まり談笑している姿が目に入った。60~90代の中に大学生も溶け込み、会話に参加していた。これは世代を超え気楽におしゃべりを楽しむ「世代間交流会」というプログラム。上智大学・老年心理学研究室の協力で毎週金曜日に開かれる同会に学生が参加しているのだ。

自治体や医療法人、NPOなどの認知症カフェが認知症患者とその家族の情報交換が主であるのに対し、「健脳カフェ」は予防活動に重点を置く。認知症予防に関心がある人や、ちょっと物忘れが気になり始めた人、あるいは軽度認知障害と診断を受けた人や家族など誰でも参加できるようになっている。

認知症治療・予防の第一人者である新井平伊医師が2021年に開設したもので、新井医師が院長を務める「アルツクリニック東京」が監修。認知症予防のための運動や対話、レクリエーション、栄養相談などのプログラムを中心に、認知症の発症や進行を遅らせる取り組みを実施し、患者やその家族の相談会も併設している。

筋トレとシナプソロジーで脳を活性化

運動プログラムでは、マシンを使わない筋肉トレーニング「ラクティブ」と、2つのことを同時に行い脳の活性化を図る動きを取り入れた「シナプソロジー」の2種類が用意されている。訪れたときは、全員イスに座り「ラクティブ」が行なわれていた。手足を動かし、体をひねり、時々立ち上がる動きも取り入れながら和やかな雰囲気。

「右手はグー、左手はチョキを両手同時に、それから…」というトレーナーの指示に、すぐにうまく対応できなくても参加者から笑いが漏れる。同プログラムは体力がない人も無理なく参加できるように組まれているが、しっかり体を動かす1時間でもある。

週1回、月に3回ほど横浜から通っているという男性(67)は、「きっかけは母の認知症でした。とても大変でしたので、自分は家族にそんな思いをさせたくないと考え、このプログラムに参加することにしました。世代間交流ではいろいろな人や大学生とも話せることが刺激になるし、筋トレやカラオケは楽しい。ここは居心地もいいんです」とリラックスした表情で話す。

交流会をサポートする学生のひとりは、笑顔でこう答えた。

「いろいろな人生の話が聞けて面白いです。最初は学生と参加者という位置づけでしたが、今では学生というより、一個人としてこの会に参加しているとみてくれているのがうれしいです。自分もこのコミュニティーの仲間と思えるんです」

レクリエーションの麻雀も一緒に楽しんでいるという。

健脳カフェは、月曜~金曜日(午前の部=10~12時半、午後の部=午後2~4時半)に開催。参加費用は2時間半で1500円(税込み)。ホームページは(https://alz.tokyo/kennocafe/)。

解説
精神科医師、アルツクリニック東京院長
新井 平伊
アルツクリニック東京(東京都千代田区)院長、順天堂大学医学部名誉教授。1953年生まれ。1978年、順天堂大学卒業。1999年、国内唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、アルツクリニック東京を開設し院長に就任。日本老年精神医学会専門医・指導医、日本精神神経学会専門医・指導医、日本認知症学会専門医・指導医。
執筆者
医療ジャーナリスト
宇山 公子
静岡県出身。会社員、新聞記者を経てフリーライターに。介護、健康、医療、郷土料理、書評など執筆。日本医学ジャーナリスト協会会員。