歩くことが健康にいいことは誰でも知っている。しかし、なぜいいのか、どういいのか、本当に証明されているのか—を筋道立てて説明できる人は、意外に少ない。そんな中、「1日1万歩」を続けることで得られる健康効果を、「エビデンス(科学的根拠)に基づくこと」にこだわり抜いて書かれた本が登場した。
大谷義夫医師が国内外の科学論文を検証

『1日1万歩を続けなさい 医者が教える医学的に正しいウォーキング』(ダイヤモンド社刊、1650円)は、メディアでおなじみの呼吸器内科医で池袋大谷クリニック院長の大谷義夫氏=写真=が国内外の科学論文を検証し、まとめ上げた。
朝歩くべきか夜歩くべきか、8000歩ではダメなのか、ランニングのほうがいいのではないかなど、様々な説がある。そこで「原因と証拠を探すこと」を趣味とする著者が徹底的に調べた結果、見えてきた事実だけを紹介した「ウオーキング大全」とも言える。
書名からもわかる通り、1日1万歩を続けることで、多くの健康効果が得られるという。不安やストレス、うつ、不眠はもとより、高血圧や糖尿病、さらには13種のがんの予防にも関与し、週2回以上のウオーキングは認知症の発症リスク低減にも寄与すると説く。
他にも感染症、脳卒中、心臓病、腎臓病、そして著者の専門である肺炎など、様々な重大疾患や生活習慣病対策として、「1日1万歩」は有効だということが、エビデンスによって証明された——というのだ。
「ウオーキングで創造性が豊かになり、その効果はウオーキング後に座っても16分間持続するという米スタンフォード大学からの報告には驚きました」と大谷氏。
ウオーキングは免疫力を向上
たとえば米ノースウエスタン大学の研究では、マラソンやランニングのような“激しい運動”は免疫力を低下させるのに対して、ウオーキングのような“軽い運動”は免疫力を上昇させる、という報告が出ている。
北海道大学が65~79歳の日本人2万人以上を対象に実施した調査によると、1日1時間以上歩いている人は肺炎にかかるリスクが下がり、30分未満しか歩かない人は肺炎による死亡リスクが33%も上昇することがわかった、としている。
こうした裏付けを一つひとつ丁寧に検証し、まとめていったこの本を読んでいくと、1人の医師や専門家が自説を唱えるだけの健康本と、明らかに性格を異にすることが理解できる。
「ビジネスパーソンにはさらなる活躍のために、高齢者には健康寿命を延ばすために、ぜひ役立てていただきたい内容です」と大谷氏。
漫然と歩くのではなく、意味と効果を知り、効率的に歩いてこそのウオーキング。この本を読むことで、「その1歩」が違ってくることが実感できる。
最大効果を手に入れる「大谷式ウオーキング」
- 「1万歩」を一気に歩く必要はない
- 歩くなら「夜」よりも「朝」、「食前」より「食後」
- 朝食には「納豆+バナナ」、ウオーキング前にはコーヒーを
- 30分ごとに100秒歩く
- 早歩きでなくていいから胸を張って「歩幅(65(センチ以上」で
- 1人より2人で、街中より森の中、そして遠回りでも「空気のいいルート」を
- 鼻毛は抜き過ぎない
- 夏前、冬前もしっかり歩く
- ウオーキングのお供は「水」
- 「かぜ」のときこそ歩く