「オートファジー」が注目されている。日本語で「自食作用」。その役割や病気との関わりが明らかになる一方、誤解も。正しい知識を生命科学と栄養学の観点からまとめたのが、オートファジーの第一人者、大阪大学教授・生命科学者の吉森保氏と日本栄養検定協会代表理事・松崎恵理氏=顔写真=の共著『不老長寿の食事術 オートファジーで細胞から若返る』(KADOKAWA刊、1650円)である。
「腹八分」なら断食は不要
オートファジーは、細胞が飢餓状態のときに細胞内の物質を分解して栄養分に変え、生き延びる仕組みとして知られてきた。また、細胞を新陳代謝させ、細胞内に侵入する病原体や有害物を狙い撃ちで分解し、細胞を正常化させる働きもあり、様々な病気を防ぐことも期待されている。
松崎氏は言う。
「オートファジーと聞くと、“16時間断食ダイエット”のイメージが強いかもしれませんが、細胞の機能であって断食やダイエット法ではありません。そんな誤解を解きたいとの思いから本書を企画しました。人生100年時代を元気に生き抜くため、断食より、しっかりとした筋肉を維持することが大切です。サルコペニア(筋肉量減少)やフレイル(虚弱化)にならない、死ぬまで元気を実現するための食事術をぜひ知っていただきたいと思っています」
“16時間断食”“半日断食”には、具体的な時間に関するデータは存在しないという。断食でカロリーを抑えるのも、1食あたりのカロリーを抑えるのも、実は効果は同じ。つまり、「腹八分」で日々済ませることができれば、断食は不要ということだ。
オートファジーを高める食品と食べ方の基本
では、「オートファジーを高める食品と食べ方の基本」とは—。
特定の食品だけを食べても健康は維持できない。重要なのは「偏らない食事」。
野菜はどう食べるかが大事。冷凍野菜を利用する、そのまま、汁に入れる、レンジで加熱など、いろいろな方法でいろいろな種類を食べる。
毎日野菜ジュースを飲むより、毎日トマトを1つ食べる。
「メタボ」は栄養素が足りないから? 糖質の摂りすぎだけが問題ではなく、糖質の代謝に必要な栄養素が足りていないのかも。
糖質不足も問題。糖質が少なすぎると、大切な筋肉が分解され、エネルギーとして使われてしまうため。
糖質を減らす分の必要なタンパク質を摂るのは大変。炭水化物を減らすと、含まれる食物繊維量も減ってしまう。
朝、昼、晩きちんと三食摂ることは生活リズムを整える上でも大切。
子どもと大人の食べ方は違う。
本書では、最新研究のエビデンスに基づき、オートファジーを活性化させる食品や毎日のレシピ、病気に強い体づくりなども紹介。無理な断食ではなく、日々の食事や生活習慣の改善で、自己回復力を高めることが大切だと著者は説く。
オートファジーに役立つ食品
- 納豆
- みそ
- しょうゆ
- チーズ
- しいたけ
- サケ
- エビ、カニ
- イクラ
- ブドウ、赤ワイン
- 緑茶、抹茶
- オリーブ油、オリーブ
- ベリー(いちご、ブルーベリー)
- ザクロ
- クルミ
- ナッツ
- ウコン(ターメリック)