将来のフレイル(虚弱)予防のためにウオーキング
最近、「フレイル」という言葉をよく聞くと思います。加齢に伴って身体と心の活力が低下した状態をこう呼びます。75歳以上の3人に1人が「フレイル」とされ、厚生労働省をはじめとして「フレイル予防」が提唱されています。その最大の予防法と言っていいのが、ウオーキングです。
最近の調査研究によると、フレイルの高齢者では、1日の歩数が5000歩までは有益な効果が見られませんが、5000歩を超えると死亡リスクが大きく下がるそうです。また、フレイルでない高齢者は、1日に約5000~7000歩で効果があるといいます。ともかく歩くこと。歩かないと、老化は進みます。
次は、フレイルの診断。チェック項目(日本老年医学会日本版CHS基準)で、3つ以上当てはまると「フレイル」、1つでも当てはまると「プレフレイル」です。
- 体重減少(6カ月2~3キロ以上の体重減少)
- 筋力低下(握力が男性26キロ、女性18キロ未満)
- 疲労感(ここ2週間わけもなく疲れた感じ)
- 歩行速度の低下(通常歩行で毎秒1メートル未満)
- 身体活動(軽い運動・定期的な運動を週に一度もしていない)
歩くことが「若さ」を保つ
「フレイル」とともに、最近よく聞くのが「ロコモ」(ロコモティブシンドローム=運動器症候群)です。運動器の障害により、立ったり歩いたりする機能が低下した状態のことです。
運動器というのは、体のなかで運動に結びつく器官の総称で、体を支えて姿勢を保つ「骨」、体を動かすための情報を筋肉に送る「神経」、収縮することで関節を動かす「筋肉」、体重の移動を助ける「関節」などがこれにあたります。各器官が連携して、私たちは歩くことができるのです。
ロコモにも診断チェック項目があります。代表的なものが「2ステップテスト」です。これは、ロコモである可能性「ロコモ度」を判定するテストの1つです。歩くのに欠かせない「下半身の筋力」「バランス能力」「柔軟性」が必要となるため、歩行能力を総合的にチェックすることができます。
巻き尺を用意し、平らな場所で滑りにくい靴を履くか、裸足で次のことを行い、「2ステップ値」を求めます。
- スタートラインを決め、両足のつま先を合わせる。
- ジャンプせず、できるだけ大きな歩幅で2歩あるき両足をそろえる。
- スタートラインから、歩き終えたところのつま先まで距離を測る。
- これを2回行い、良いほうの記録を採用。
- 2歩幅(センチ)÷身長(センチ)=2ステップ値
たとえば、身長が165センチで2歩幅が210センチの場合、2ステップ値は1.27となります。1.3以上なら問題ありません。1.3以下だと「ロコモ度1」なり、ロコモが始まっていると判定。1.1以下だと「ロコモ度2」はロコモであり、放置すると自立生活が困難になると判定します。
レオナルド・ダヴィンチは、人間の足は工学上の最高傑作であり芸術作品—と言っています。まさに、足が人間の根幹であり、それを動かしているのは脳です。足が衰えると脳にくるし、脳が衰えると足にくるのです。ボクシングを見ればよくわかります。頭を強打されると足にきてダウン。逆も言えます。足が弱ると頭もボケるわけです。
というわけで、歩くことは生きること。歩くことが若さを保ちます。正しく歩いて入れば、あなたは10歳は若く見えるのです。