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「涙」で乳がんの有無を判定する「痛くない検査法」登場

「涙」で乳がんの有無を判定する「痛くない検査法」登場
エイジングケア
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女性の9人に1人が乳がんに

乳がんを発症する女性は増加傾向にあり、日本の女性は9人に1人が生涯のうちに乳がんになるといわれています。乳がんは早期発見すれば完治する可能性が高いがんなので、定期的に検診を受けて早期発見することがとても大切です。

ところが、厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2022年における乳がん検診の受診率は47・4%でしかありません。現在の世界の乳がん検診受診率をみると、最も高いのが米国、次いで英国でともに7割を超えています。日本における女性の受診率がこれらの国と比べてかなり低いのは、乳がんを発見しやすくするために乳房を圧迫板で強く挟んで撮影するマンモグラフィー(乳房X線検査)という検査が痛いとして、敬遠される影響もあるようです。

マンモグラフィーの痛みなく迅速に判定

そうしたことを受け、近年、神戸大学発のベンチャー企業が、涙に含まれている「エクソソーム」を調べることで、乳がんかどうかが分かるという、世界初の画期的な検査技術の研究開発を進めています。エクソソームとはさまざまな細胞から放出される1万分の1ミリほどの小さなカプセル(小胞)で、がん細胞から出されるエクソソームには特徴があります。

現在は同ベンチャーの技術アドバイザーを務める神戸大学名誉教授の竹内俊文氏が、エクソソームを超高感度で検出することができる測定法の基盤技術を手がけました。超高感度なので微量な涙でも測定できるのです。

具体的には、目尻にドライアイの検査で用いる濾紙(ろし)片の「シルマー試験紙」を挟んで、数分後に試験紙が青色に変わるまで待ちます。こうして涙を採集したら、専用の分析装置で涙の中のエクソソームを測定すれば、乳がんの有無を判定することができるというのです。

これまでのマンモグラフィーと違って痛みもなく迅速にエクソソームを識別できるので、涙を用いて乳がんを早期発見することができるというわけです。現在は神戸大などとの連携により臨床研究が進められています。早い時期の実用化に期待したいものです。
 

解説・執筆者
医学博士
中原 英臣
医学博士。新渡戸文化短期大学名誉学長、山野医療専門学校副校長、西武学園医学技術専門学校東京池袋校・東京新宿校校長。夕刊フジで「あの医療情報ウソ?ホント!」を連載。