オーバーワークは腎臓に負担かかる
私の知人は、運動不足解消のためにウオーキングでいいところをジョギングにし、毎朝、3キロ日課にしていました。あるとき、調子がいいので5キロを走って帰宅し、トイレに行くと血尿が出たのです。慌てて医者に行き、検査をしてもらいましたが、膀胱(ぼうこう)にも腎臓にも疾患はありませんでした。
これは、「突発性血尿」というもので、腎臓が発した危険シグナルです。つまり、オーバーワーク。走るとどうしても腎臓に負担がかかり、突発的に尿に血やタンパクが出るのです。
ウオーキングはジョギングと同じ有酸素運動です。ただし、消費カロリーに違いがあります。腕の振り具合や歩幅によっても違いますが、ウオーキングが必ずどちらかの足が地面に着いているのと違い、ジョギングは両足が地面から離れる運動であるため、その負荷でカロリー消費量が増えるのです。30分ほどのやや速めのウオーキングの場合50~70キロカロリーですが、ジョギングは、200~280キロカロリーになります。
ウオーキングで最も気になるのが、歩数と距離です。よく言われる目安が、「1日1万歩」で、私は50代の頃は歩数計を持って、それを目標にしていました。一般サラリーマンは平均6000歩、開業医は平均2000歩などというデータがあったからです。
人間の平均的歩幅は、身長165センチの人なら約74センチです。とすると、1万歩というと約7.4キロメートルとなり、1時間半はかかります。東京駅から歩き始めるとしたら、有楽町、浜松町、田町を経て品川で約7キロだから、かなりの距離です。
ウオーキングは歩数や距離より「質」が重要
しかし、最近の研究では、歩数や距離より「質」が重要で、それ次第で長寿遺伝子が活発化すると考えられるようになってきました。
その質とは、主に速度で、中強度の歩行、いわゆる「ちょっと速歩」です。息が切れるのはダメだが、歌が歌えるような「散歩あるき」ではダメです。しかも、長時間歩き続ける必要もないのです。
かつてはウオーキングなどの有酸素運動は、30分以上継続しなければ脂肪燃焼効果が得られないと考えられてきましたが、1回10分を3回でも効果に差がないことがわかったのです。
つまり、20分程度の「ちょっと速歩」ウオーキングを1日に2~3回行うほうが効果的なのです。つまり、シニアの「歩数自慢」は、ほとんど意味がないのです。それどころか、65歳以上のシニアのウオーキングのし過ぎは、身体に弊害すらもたらします。
高齢者のフレイル(体の虚弱化)ではない高齢者では、1日に5000~7000歩で効果は頭打ちになるそうです。
厚生労働省が推進する「健康日本21」では、65歳以上のシニア男性の目標歩数を7000歩、シニア女性を6000歩と定めています。すでに後期高齢者となったので、私はかつてようには長く歩いていません。いまは1日6000歩が目安です。
なお、ウオーキングするのは、朝より夕方の方が断然効果的です。朝は血圧が低めなので長く歩いてはいけません。それに比べ夕方は体力も充実しています。しかも、夕方歩きは不眠解消にもつながります。