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うつ、ストレスにはブレイクタイムの「紅茶」がコーヒーより効果的

うつ、ストレスにはブレイクタイムの「紅茶」がコーヒーより効果的
予防・健康
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リモートワークでコミュニケーション不足増加

2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になると推計されています。高齢になればなるほど発症リスクは上がります。が、予防では、中年期以降の脳の活性化がカギを握ります。

「ご自身で考えて作り上げるクリエイティブな仕事は、脳を広範囲に働かせることができます。しかし、誰もがそのような仕事に就けるわけではありません。職場で脳を活性化するには、人とのコミュニケーションが役立ちます」

こう話すのは、杏林大学名誉教授の古賀良彦医師。精神神経科の専門医で、香りなどの五感と脳の健康に関わる研究を多く手がけ、脳の活性化の方法も啓蒙しています。

「職場の自販機の前や休憩室で、ひと息つきながら同僚や後輩、上司とコミュニケーションをとることが、脳の活性化に役立つのです。しかし、リモートワークの発達でコミュニケーションが減った企業もありました」

リモートワークは自宅で仕事ができて便利ですが、会議前後の余談もチャットで済ますなど、対面のコミュニケーションとは異なることがあります。パソコンの文字だけで相手の顔が見えないことから、強いストレスや不安を抱く人もいるのです。リモートワークによる過度なストレスが続いて家族との関係もギクシャクし、家庭内でも孤立した人もいるそうです。

「孤立した状態で強いストレスや不安を抱えていると、うつ病のリスクを高めます。うつ病で心身の状態が悪くなると、命に関わるので注意しましょう」

紅茶で脳の血流改善

今年5月、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行された後、在宅勤務を終了して出勤勤務に切り替えた企業が増えました。久しぶりに職場の仲間とコミュニケーションを深めた人もいるでしょう。同僚とのコミュニケーションは脳を活性化しますが、ひと息つくときの飲み物でも、脳の血流は良くなります。

「私の過去の研究では、コーヒーやエナジードリンクよりも、紅茶が脳の血流を良くして生産性の向上に役立つことがわかりました」

古賀医師の研究では、コーヒー、紅茶、エナジードリンク、水の4種類の飲料を飲んだ被験者が、計算や記憶の問題に取り組み、そのときの脳の血流量の変化、自律神経の効果測定、心理に与える影響を調べました。すると、脳の血流量の増加、自律神経のバランスを整える機能、緊張緩和の作用の全てで紅茶が群を抜いて好結果を示しました。

「仕事の合間にひと息ついて、紅茶を飲みながら同僚と雑談すると、脳を活性化させて生産性を上げます。加えて、認知症予防に役立つのです。リタイアした人も、新たな職場や趣味での活動の場で、積極的に人との交流を深めましょう」

中年期から取り組むべき認知症予防では、もちろん、生活習慣病予防のための食生活改善や運動習慣も欠かせません。が、人と楽しい会話をしながら紅茶を味わうことも、役立つのです。

「休日のアフタヌーンティーで、友人や家族とゆっくりとした時間を過ごすのも良いでしょう。ちょっとした工夫でストレスを発散し、脳を活性化していただきたいと思います」

解説
杏林大学医学部名誉教授
古賀 良彦
慶應義塾大学医学部卒業。1990年、杏林大学医学部精神神経科学教室助教授、1999年、同主任教授、2016年、杏林大学医学部名誉教授に就任。医学博士、日本精神神経学会認定専門医、日本臨床神経生理学会認定医・名誉会員、日本催眠学会名誉理事長。著書・テレビ出演多数。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。