4キロの内臓脂肪を見てびっくり
健康診断や人間ドックでメタボに該当しても、保健指導を拒否する人は少なくない。日立健康管理センタ長の中川徹医師も「私たちの施設の人間ドック受診者でもこういう人は一定数いて、頭が痛い問題となっています」と明かす。
中川医師はそうした人たちに、“見える化”作戦で保健指導を受けるように説得しているという。それは、体脂肪のモデルや内臓脂肪のCT画像を見せることだ。
メタボと診断された人に、まず体脂肪4キロの模型を見せ、「このくらいの脂肪があなたにもついていますよ」と言うと、「まさか」と反応し、さらに、内臓脂肪のCT画像も見せると、「これは私の内臓ですか?」と度肝を抜かれるという。
大島登さん(仮名・43歳)は、同センタの「はらすまダイエット」への参加を迷っていた。中川医師は、大島さんに体脂肪の模型やCT画像を見せ、「赤くなっている部分があなたの内臓脂肪です」と指摘。「近年の研究により、脂肪には皮膚の下にある皮下脂肪と、内臓まわりにつく内臓脂肪があります。とくに内臓脂肪が増えると、悪玉コレステロールが増加して動脈硬化のリスクが高まり、血糖値や血圧を上昇させる要因にもなります」と説明した。
こうした生活習慣病から、心筋梗塞や脳梗塞に発展するリスクが高まる。大島さんは自分の内臓脂肪を初めて見てびっくりし、大きな病気の危険が高まることを理解して、はらすまダイエットに参加する決心をした。
生活習慣病関連の数値が目立って改善
はらすまでは、90日間で体重の5%を減らすことを目標にする。大島さんはスタート時の体重71キロから、90日後には5%を大幅に下回る64キロまで減らすことに成功した。その結果、生活習慣病関連で目立って改善したのが、糖尿病の指標となる空腹時血糖値だった。120あったのが88まで減少し、正常値(110未満)内に収まった。
「体重の3~5キロを減らすだけで動脈硬化の進行や、血糖値・血圧の数値を改善できます。大島さんは、まさにそれでした」(中川医師)
こうした改善例がある一方で、冒頭で紹介したように同センタの人間ドックでメタボと診断されても、保健指導を拒む人がいる。それぞれに言い分があり、①自己管理しているので必要ない②減量の必要は感じているが、仕事が忙しくてそれどころではない③はらすまのプログラムに参加するのは面倒だ—と回答する人が上位を占める。ダイエットを始めるかどうか、人に言われたくない人もいるそうだ。
「認知行動科学に基づく『はらすまダイエット』は、メタボ撃退に効果あり、その結果、心筋梗塞や脳梗塞などの一次予防にも役立ちます」
中川医師は、メタボと診断されてもダイエットに乗り気でない人にはこのことを知ってほしいと呼び掛けている。