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簡単な手料理づくりが認知症予防になる

簡単な手料理づくりが認知症予防になる
予防・健康
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認知症予防は50代から

患者数が右肩上がりに増え続けている病気のひとつに認知症があります。2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になると推計され、すでに要介護認定の原因第1位にもなっています。「まだ大丈夫」と過信しがちですが、認知症予防は、60代はもちろん、50代からが重要です。

「高齢期に認知症を発症する約25年前から、脳に兆候は現れるといわれています。まだ若いから安心ではなく、中年期から脳を活性化させて、認知症予防を心がけることが大切です」

こう話すのは、杏林大学名誉教授の古賀良彦医師。精神科の専門医として、うつ病や睡眠障害、認知症などの病気の診断・治療を行う一方、脳と健康に関わる研究を数多く手がけます。

「脳を効率よく活性化するには、毎日短時間、クリエイティブなことに取り組むのがお勧めです。ご自身で考えて作り上げることが、脳に好影響を与え、ストレス発散にもつながります」

「クリエイティブなこと」というと、絵画などの芸術作品を想像する人もいるでしょう。道具を揃え、習いに行って、作品を作るとなるとたいへんです。でも、古賀医師が勧めているのは、そんな専門性の高いことではありません。

折り紙、塗り絵、そして手料理…簡単夢中に取り組む

「折り紙、塗り絵、プラモデルなど、安価で気軽に取り組めることを探しましょう。楽しくなければ脳は活性化しません。1日15~30分程度、楽しく夢中になれることに没頭しましょう」

どのように色を塗るかなど、考えながら手を動かしていると脳が幅広く活性化するそうです。また、クリエイティブなことに少し夢中になると、ストレス発散につながるため、さらに脳に好影響をもたらします。「過度なストレスを抱える人は、コロナ自粛やリモートワークで増えました。過度なストレスは脳に悪影響を与え、うつ病の引き金や、認知機能の低下につながります。日々のストレスはその日のうちに発散し、ためすぎないことが大切です」

厚労省の2022年「労働安全衛生調査」によれば、「現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある」と答えた人の割合は8割以上。前年の調査は5割台なので、仕事や職場のストレスを抱えている人が増えたことになります。このようにストレスを抱えて疲れた状態では、帰宅後のストレス発散も一苦労です。

「何もする気が起きないときには、目玉焼きなど簡単な手料理を1品、夕食用に作ってみてください。少しだけ料理に意識を集中させると、ストレス発散になります。また、出来上がった料理をおいしく食べると、五感が刺激されて脳に良い影響を与えます」

ただし、「ストレスを発散しなければ!」と身構えると、それ自体がストレスになります。手軽にできる料理などにちょっと取り組むのがコツ。「五感を意識するとストレス発散、認知症予防、さらには質の良い睡眠にも役立ちます。アロマやハーブティーもお勧めです。お気軽な方法で五感を働かせましょう」

解説
杏林大学医学部名誉教授
古賀 良彦
慶應義塾大学医学部卒業。1990年、杏林大学医学部精神神経科学教室助教授、1999年、同主任教授、2016年、杏林大学医学部名誉教授に就任。医学博士、日本精神神経学会認定専門医、日本臨床神経生理学会認定医・名誉会員、日本催眠学会名誉理事長。著書・テレビ出演多数。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。