汚れたまぶたでは涙の質が落ちる
国内で約530万人を悩ます「かすみ目」は、スマートフォンやパソコンなどの長時間使用が関係している。画面の凝視でまばたきが減りドライアイで、角膜を覆う涙層が失われることが主な原因だ。ほかにも見逃せない原因がある。
「涙の油分を作るマイボーム腺が塞がることで、マイボーム腺機能不全に陥っている人が多い。涙はムチン、水分、油分の3層から成り立ちますが、マイボーム機能不全で涙の質が悪くなると、炎症やドライアイを起こしやすくなるのです」
こう説明するのは、「おおたけ眼科」(神奈川県)の綾木雅彦院長。約20万人の患者の診断・治療を行う一方、マイボーム腺機能不全などの研究にも力を注いでいる。
「まばたきは、涙によって目の表面をきれいにするワイパーのような役割があります。マイボーム機能不全で涙の質が低下していると、汚れた状態でワイパーを使用しているようになるのです」
マイボーム腺の開口部は、まぶたや目の下のまつ毛の生え際に連なる。まぶたを閉じていたときに、油分が目の表面に均一に分泌され、涙の表層を覆って涙の水分を逃さない仕組み。マイボーム腺機能不全に陥ると、開口部が詰まることで、まぶたを閉じても油分が十分に分泌されない。油分が減ると目の表面の水分は蒸発しやすくなり、ドライアイになるのだ。
まず、まぶたの際をやさしく洗う
国内のドライアイ患者は約2000万人以上と推計され、知らぬ間にドライアイで視力が低下している人もいるという。
「マイボーム腺機能不全は男性が多い。いわゆる目の汚れで油分が固まり、マイボーム腺の開口部が詰まってしまうのです。目の検査をするとすぐにわかります。しかし患者さんは、目の炎症などの原因が、まぶたの汚れとは気づいていないのです」
女性は、アイメークのメイク落としを適切に行えば、まぶたの清潔を保つことが可能だ。しかし、男性はまぶたを意識して洗う機会が少ない。
「まぶたの際をやさしく洗ってください。患者さんには、涙と同じ成分の『まぶたクレンジング剤』を使用し、眼瞼清掃(がんけんせいそう=リッドハイジーン)を行っています」
リッドハイジーンとは、まぶたの際(きわ)の洗浄のこと。「まぶたクレンジング剤」はさまざまな製品が市販されている。適切にまぶたの際を洗うとマイボーム腺の目詰まりが解消され、涙が正常に機能し始め、すぐに視界がクリアになって目の充血なども治まりやすいという。
「リッドハイジーンは男性にぜひやっていただきたい方法です。老眼だけでなく、ドライアイや疲れ目、かすみ目、涙目予防にもつながります」
まぶたの清潔を保つことが、眼病予防に役立つことを覚えておこう。
綾木院長お勧め「まぶたの洗浄法」
- 朝晩の洗顔時、もしくは、まぶたクレンジング剤を使用
- 両手の人さし指と中指を目頭にそっと置く=写真上
- まつげの際に沿って指を左右に動かし、やさしくこすり洗いをしていく=写真下
- まぶたクレンジング剤の後はティッシュで軽くふき取る
※シャワーを目に当てながら行う「アイシャワー」もよい。ただし、シャワーの時には、お湯が熱すぎないように注意する