目(眼科) かすみ目の対処法

かすみ目の対処法(2)~老眼の進行を食い止める「目ほぐし」の方法

かすみ目の対処法(2)~老眼の進行を食い止める「目ほぐし」の方法
予防・健康
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日本人の約半分は老眼

年を重ねるうちに、新聞などの文字を裸眼で読みにくくなった—ということはないだろうか。本や雑誌の紙面からを20センチ程度離すと文字がぼやけてはっきり見えない。40~50センチ離すと文字が見やすい。——このように、近くの文字がぼやけて、遠くが見やすくなる主な原因は「老眼」。老いた眼である。

「近くを見るときには、目のレンズの役割を果たす水晶体が、厚さを変えてピント調節しています。しかし、加齢とともに水晶体が硬くなり、厚さを変えることが難しくなるのです。同時に、水晶体の厚さを調節する筋肉の毛様体も硬くなり、スムーズにピント調節ができなくなるのが老眼です」

こう説明するのは、「おおたけ眼科」(神奈川県)の綾木雅彦院長。慶應義塾大学医学部眼科学教室講師を兼任にし、「シルバービジョン(老視)」すなわち老眼の研究を数多く行う。

「私たちの研究では、47歳から老眼鏡を使用し始める人が増えます。日本人の約半分は老眼といっても過言ではありません。ドライアイの人は老眼になりやすいのです」

ドライアイから老眼が進行

近くの文字を読むときには、毛様体によって水晶体が厚みを帯びることでピントを合わせる仕組みがある。老眼になると、毛様体も水晶体もうまく働くことができないため、手元の文字にピントを合わせることが難しくなるのだ。ドライアイは、目の表面を覆う涙が蒸発して角膜の表面が凸凹になり、ものがよく見えなくなる。

「ドライアイでかすみ目になると、ピントを合わせようとして水晶体や毛様体に負荷をかけることになります。結果として老眼につながりやすいのです」

綾木院長らの2022年の研究報告では、女性はドライアイから老眼になりやすいことがわかった。しかも、更年期以降、ドライアイを発症する人が増え、その後、老眼がひどくなるパターンが多いという。

「更年期の代謝異常で目の表面の涙層が破壊されることから、女性は男性よりも約3倍、ドライアイになりやすいのです。老眼も進むことで気持ちが沈み、睡眠障害に陥るなど、負のスパイラルに陥る方もいます」

男性の場合は、女性とは異なり、涙の構成成分の油分を作るマイボーム腺の機能不全が関わることが多いそうだ。ドライアイ予防は、綾木院長提唱の「完全まばたき」(0.5~1秒かけてゆっくりまばたきする)が役立つ。では、老眼の対処法は?

「老眼の進行を食い止めるには『目ほぐし』=別項=がお勧めです。私たちの研究で、老眼症状を軽減する効果が実証されています。長時間のパソコン作業のときにもご活用ください」

目ほぐし

  1. 人さし指を目から約30センチのところに置き、指先を1~2秒見る
  2. 6メートル以上遠くを1~2秒見る
  3. (1)と(2)を交互に20回繰り返す。通勤中に電車の中で、近くを見た後に窓の外の景色を交互に見てもよい

※綾木雅彦著『視力防衛生活』(サンマーク出版)から

解説
おおたけ眼科院長
綾木 雅彦
おおたけ眼科院長。慶應義塾大学医学部眼科学教室講師。医学博士。1982年慶應義塾大学医学部卒。ハーバード大学留学、昭和大学医学部眼科准教授などを経て現職。日本眼科学会専門医や日本抗加齢医学学会専門医、睡眠健康指導士などの資格を有し、ブルーライト研究の第一人者。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。