スマーフォンの文字がぼやけてよく見えないなど、かすみ目に悩まされる人は多い。「年だから仕方がない」とあきらめがちだが、目の健康を考えた生活によって改善が可能だという。専門医に聞いた。
目が悪くなる人、ならない人の違いは?
厚生労働省の2022年「国民生活基礎調査」によれば、かすみ目に悩まされている人は530万人以上。ものが見づらいという人も450万人。かすみ目への影響については、スマートフォンやパソコンの画面の長時間使用が指摘されている。しかし、画面を長時間見ている人の全てが、目にトラブルを抱えているわけではない。目が悪くなる人、ならない人の違いはなにか。
『視力防衛生活』(サンマーク出版)=写真=の著者で、「おおたけ眼科」(神奈川県)の綾木雅彦院長はこう指摘する。
「画面を長時間見ていても、きちんとまばたきができていれば、目のトラブルを防ぐことが可能です。かすみ目などに悩む方の多くは、まばたきがきちんとできていないのです」
これは、まさに“目からウロコ”だ。
まばたきが不十分だと、かすみ目に
「まばたきが不十分な状態では涙の量が減ります。ドライアイになると目の表面が凸凹し、ものがぼやけてかすみ目になるのです」
目の外側の角膜は、涙の層で守られているという。その厚みはわずか約0.007ミリ(7マイクロメートル)。この涙の層は、角膜を覆うムチン層(粘液)、水層、水分の蒸発を防ぐ油層から成り立つ。
「涙の層が均一で目の表面が滑らかなのが健康な目の状態。涙を分泌して目に均一に広げるのが、まばたきなのです。まばたきがきちんとできていないと、涙の層は維持できません」
まばたきの働きとしては、(1)涙を広げ、目の表面の凸凹の解消する(2)脳の情報処理(3)ブルーライトの遮断—に貢献しているという。本来は0.5~1秒をかけた「完全まばたき」が理想だが、現代人のまばたきは平均0.3秒と短い。
「まばたきが少ないと目の表面は凸凹になります。私は患者さんのデータをとって長年研究していますが、2015年は全体の約5割、22年は全体の約7割の目が凸凹でした」
綾木院長は、慶應義塾大学医学部眼科学教室講師として、さまざまな研究論文も発表している。そのひとつとして、昨年、「ドライアイの女性は老眼になりやすい」ことを明らかにした。
老眼は、目のピント調節機能が衰えて、近くの物を見るときにピントを合わせることが難しく、ぼやけたように見える。
「ドライアイも老眼も、完全なまばたきやアイケアなどで改善可能です。目をいたわる習慣を心がけましょう」とアドバイスする。
目の健康を守る「完全まばたき」
- 上まぶたをおろし、下まぶたと0.5~1秒、しっかりくっつける(いつもより少し長めにまぶたを着地させる意識で)
- 目を開ける。まぶたをおろしたときに、しわができるほど力まない。速すぎたり、まぶたが下がりきらないと効果が減る。運転中は危険なので控える。まばたきで目が痛むときは、痛みが治まってから再開。痛みが治まらないときには眼科へ。
※『視力防衛生活』から