腸活がストレス、便秘を後押し…
加齢とともに大腸の機能などが衰え、便秘に悩む人が増える。そんな大腸の健康を底上げするため、腸内環境を整える“腸活”がブームだ。善玉菌が入った発酵食品や食物繊維たっぷりの食材を選び、1日3回とりいれて—と腸活に精を出してみたものの、なかなかうまく排便に結びつかない人もいるようだ。
「機能性便秘はストレスとの関係が深い。食生活の見直しを気にしすぎると、それが新たなストレスになって便秘につながります。考えすぎないようにしましょう」
こう話すのは、「鳥居内科クリニック」(東京都世田谷区)の鳥居明院長。機能性便秘のひとつ過敏性腸症候群の診断・治療の第一人者で、長年、便秘の患者を数多く救っている。
「機能性便秘を繰り返している方は、主治医と相談しながら食生活の見直しに取り組むとよいでしょう。腸内環境を整えるといっても、不溶性食物繊維を食べ過ぎるとおなかが張って、おなかの調子が悪くなることがあります。自己判断は禁物です」
不溶性食物繊維は、ゴボウやキャベツなどに多く含まれ、水分を吸収して膨れ上がる性質を持つ。膨張した便による腸管刺激で排便は促されやすい。しかし、大腸の動きが悪いと、膨張した便が詰まったように動かなくなり、かえって便秘の後押しをすることになる。それに気づかず、「なぜ食物繊維を食べているのに、便秘が治らないのだ!」と悩み、さらに不溶性食物繊維を食べてしまう人もいるので注意しよう。
腸活食材の過度の摂取や制限はNG
「水分に溶ける水溶性食物繊維は、機能性便秘で硬くなった便を軟らかくし、便通をよくします。コンブやワカメ、モズクなどの海藻類に多く含まれます。ただし、考えすぎないことも大切です」
鳥居院長の食生活の改善のコツ(別項)を参考にしていただきたい。食事内容の見直しといっても、基本的に機能性便秘の人が食べてはいけない食材はないという。過度の摂取や極端な制限をしてストレスを感じることが、腸の動きをかえって悪くする。
「『75点でよしとする』というよい意味でのいい加減な考え方が、症状改善に役立ちます。食事も運動も楽しく取り組むことが需要です」
最初は身体を5分間動かしてみる。苦痛でなければ、次回はちょっと長めにしてみる。身体を動かすとリラックス効果があるため、ストレスによる機能性便秘の改善につながるのだ。
「腹式呼吸もリラックス効果があります。①背筋を伸ばして鼻からゆっくり息を吸い込み、②口からゆっくり息を吐きます。ため息をつくように、息を吐くときは吸うときの倍の時間をかけるとよいでしょう」
リラックスしながら困った便秘に取り組もう。
便秘改善に役立つ! 生活習慣見直し6つのコツ
- 1日3食、規則正しい生活(生活リズムを整える)
- 偏った食事内容にならないように、バランスの良い食事内容を心がける
- 毎日、同じような時間帯にトイレに行く(便意がなくてもトイレに行き排便リズムを整える)
- 排便日記をつけてみる
- ウオーキングなどの運動習慣を持つ
- 楽しく続けられる趣味を持つ
※鳥居明監修『図解よくわかる 過敏性腸症候群で悩まない本』(日東書院本社)から