原因不明は機能性、大腸がんなど原因は器質性
国内で約440万人を悩ます便秘は、加齢に伴い増加傾向にある。特に男性は65歳以上が多い。では、何が原因で便秘になりやすいのか。
「慢性的な便秘の原因は、機能性便秘と器質性便秘の2つに大きく分けることができます。男女問わず、加齢に伴い、どちらの便秘も起こしやすくなります」
こう話すのは「鳥居内科クリニック」(東京都世田谷区)の鳥居明院長。慢性便秘症の診断・治療を長年行い、多くの患者を救っている。
「大腸に炎症はなく原因がはっきりわからないのが機能性便秘です。器質性便秘は原因がはっきしています。便秘の患者さんには、まず検査で器質性疾患の有無を確認した上で、機能性便秘の診断を行っています」
器質性便秘の代表格は大腸がんだ。男女合わせたがん罹患率の第1位を占めるほど、大腸がんになる人は多い。がん死因の女性の第1位も大腸がん(男性は第2位)である。そして、便秘を引き起こすのは大腸に関わる病気だけではない。
「パーキンソン病やレビー小体認知症などの脳に関わる病気、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、糖尿病などの代謝疾患など原因はいろいろと考えられます。その原因を見逃さないことも重要です」
加齢で機能性便秘が増える
気管支ぜんそくなどで処方される抗コリン薬など、服用している薬によっても便秘は生じる。では、大腸がんなどの病気や服用している薬も関係ない機能性便秘はなぜ起こるのか。
「機能性便秘は、大腸や肛門の動きが悪くなることに関わります。小腸で吸収分解された食べ物は、大腸でさらに余分な水分などを吸収して便を作り、直腸へと送り出します。この送り出す過程に支障が生じると、便秘になるのです」
大腸のぜん動運動が悪いと、食べ物の残りカスを上手く運んで便にすることができない。本来、残りカスは、大腸に到達してから3~10時間で直腸に到達し、便意を感じる仕組みになっている。大腸のぜん動運動が遅く残りカスが長く大腸にとどまると、水分がどんどん吸収されて便が硬くなり、直腸に到達しても排便をスムーズに行えなくなるのだ。
「機能性便秘は、加齢に伴う筋力低下や、腸の働きの低下は便秘につながります。頻尿によるトイレを避けるために水分を控えたときなど、食習慣も関わります。さらに、高齢者の場合は便意を感じにくい、食事量の減少の問題などもありますが、ストレスによって引き起こされることが多いのです」
定年後の生活環境の変化や、子供の独立・親の介護など、さまざまなストレスを抱えていると便秘になりやすいという。
「器質性便秘の可能性もあるので、便秘が続くようならば早めに受診しましょう」と鳥居院長は呼びかける。
便秘の主な原因
- ストレスや加齢で腸や肛門の動きが悪くなる
- 大腸がんなどの病気によって便秘が起こる
- 処方されている薬の副作用で便秘になる
- 食事量が減って便のかさも減ることで便秘に
- 水分を控えることで便が硬くなって便秘に
- 悪い姿勢で腰痛などになり、腹圧をかけづらくなって排便が難しくなる