「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」という漢方薬をご存じですか?
ドラッグストアでもよく見かける補中益気湯は、「からだの内側から元気になれる」といわれ、体力の低下が気になり始める40代以降の女性におすすめの漢方薬です。
ここでは、補中益気湯が効果を発揮する症状や副作用の有無について解説します。
補中益気湯とは?
補中益気湯の「中」は胃腸を指しており、「補中」とは胃腸のエネルギーを補うという意味、「益気」は元気をだすといった意味が込められた漢方薬です。
補中益気湯は胃腸の機能を整えて、内側からからだを元気にします。別名「医王湯」とも呼ばれており、医療機関でもよく処方されています。
補中益気湯を構成する生薬は以下のとおりです。
生薬一覧
人参(にんじん)
ウコギ科のオタネニンジンの根を通年湯通ししたもの。主要薬理作用は中枢興奮作用、抗ストレス作用、抗疲労作用、血圧降下作用、血糖降下作用、血液凝固抑制作用、抗胃潰瘍作用、免疫賦活作用、抗腫瘍作用
黄耆(おうぎ)
マメ科のキバナオウギなどの根。主要薬理作用は免疫賦活作用、血圧降下作用、抗炎症、抗アレルギー作用
蒼朮(そうじゅつ)
キク科ホソバオケラの根茎。主要薬理作用は健胃作用、止瀉作用、発汗作用、利水作用
柴胡(さいこ)
セリ科のミシマサイコの根。主要薬理作用は中枢抑制作用、抗消化性潰瘍作用、肝障害改善作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用
当帰(とうき)
セリ科トウキまたはホッカイトウキの根を通例湯通ししたもの。主要薬理作用は免疫賦活作用、中枢抑制作用、鎮痛作用、筋弛緩作用、血液凝固抑制作用、抗腫瘍作用
升麻(しょうま)
サラシナショウマの根茎。主要薬理作用は鎮静・鎮痙作用、解熱作用、抗炎症作用、肝障害改善作用
陳皮(ちんぴ)
ミカン科のウンシュウミカンなどの成熟果皮。主要薬理作用は中枢抑制作用、抗炎症作用、健胃作用
生姜(しょうきょう)
ショウガ科ショウガの根茎もしくはときに周皮を除いたもの。主要薬理作用は中枢抑制作用、解熱・鎮痛作用、抗痙攣作用、鎮咳作用、抗消化性潰瘍作用
大棗(たいそう)
クロウメモドキ科のナツメの果実。主要薬理作用は抗アレルギー作用、抗消化性潰瘍作用、抗ストレス作用
甘草(かんぞう)
マメ科のカンゾウの根や根茎。主要薬理作用は鎮静、鎮痙作用、抗消化性潰瘍作用、肝障害改善作用、抗炎症作用
(※『生薬単(ショウヤクタン)―語源から覚える植物学・生薬学名単語集』より)
補中益気湯は体力低下時や食欲不振、胃弱、夏やせ、こじれて長引くかぜなどにおすすめ
補中益気湯は、虚弱体質で体力のない人に向く漢方薬です。
胃腸の弱りで起きる体力低下、食欲低下、夏やせ・夏バテ、長引くかぜ、かぜによる体力低下などの症状に用いられます。多汗症や痔、脱肛、子宮下垂、陰萎といった症状に用いられることもあります。
補中益気湯の副作用と注意点
補中益気湯は、副作用を起こすことがあります。
飲み始めてから、皮膚のかゆみや発赤、発疹、胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気、下痢といった症状があらわれた場合は使用を中断し、医師や薬剤師に相談してください。
また、まれに成分の過剰摂取で以下のような重篤な副作用を起こす場合もあります。
重篤な副作用
- 偽アルドステロン症:だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症
- 間質性肺炎:から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱
- 肝臓の重い症状:だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色
補中益気湯に含まれる生薬「甘草」は、過剰摂取により偽アルドステロン症を起こす可能性があるため、ほかの漢方薬と併用する際は、甘草の摂り過ぎに注意してください。
漢方は専門家に相談するのがベスト
漢方薬は体質に合わせて選ぶことが重要であり、人を選ぶ薬といえます。体質に合わない漢方薬を服用した場合、副作用を起こしやすくなったり、効果があらわれなかったりするためです。
体力低下に効果的な漢方薬は、補中益気湯だけではありません。十全大補湯のように、胃腸に問題がないような体質の人に向けた漢方薬もあります。
自身の体質がよくわからない人は、自己判断ではなく漢方に詳しい専門家に処方してもらうのがベストです。
最近では、オンラインで悩みを相談し、薬剤師とAI(人工知能)の分析によって個人に合った漢方薬を提案してくれる「あんしん漢方」などのサービスも登場しています。
「自己判断で漢方薬を選ぶのは不安」という人は、利用を検討してみましょう。
胃腸の弱りからくる体力低下には補中益気湯
補中益気湯は、体力低下時や食欲不振、胃弱、夏やせ、こじれて長引くかぜなどにおすすめの漢方薬です。
ただし、体力低下に効果のある漢方薬は他にもあります。漢方薬は、体質を見極めて選択することが重要なので、プロの診断のもと使用するのが望ましいです。