40代以降の女性に発症しやすい「胆石」
中年期以降、運動不足で体重が増えると、LDL(悪玉)コレステロール値などが高くなり、HDL(善玉)コレステロール値が低くなる脂質異常症を起こしやすくなります。脂質異常症は血管を変性させて動脈硬化を引き起こし、心臓病や脳卒中などのリスクを高めることはご存じの方も多いでしょう。では、コレステロール値が異常に高いと胆石症にもなりやすいことをご存じでしょうか。
「胆石は、胆管や胆のうに生じる結晶のかたまりで、構成成分によっていろいろな種類があります。中でも、約8割の原因となっているのがコレステロール結石です」
こう説明するがん・感染症センター都立駒込病院の神澤輝実名誉院長は、消化器内科の専門医です。胆膵領域の診断・治療・研究を長年数多く行っています。
「胆石のリスクは、肥満、高脂肪食で上がります。特に40代以降の女性が発症しやすいので注意が必要です」
食生活が乱れている男性も要注意です。胆管は、肝臓で作られた消化液の胆汁が流れ、胆のうは胆汁を一時的に溜めています。胆管に胆石が生じても、小さければ胆汁と一緒に排出されます。しかし、胆石が大きいと胆管を傷つけて炎症を起こし、胆管を塞ぐことで、右脇腹付近の痛みや皮膚などが黄色くなる黄疸(おうだん)などの症状を引き起こします。
「胆のうの結石は、症状があれば胆のうを取り除く手術を行うことで再発を防げます。この治療で、偶然にも、胆のうがんが見つかるケースもあります。女性は、胆のうがんを起こしやすいので、胆石を持っている方は注意が必要です」
女性は胆のうがんを起こしやすい
女性が胆のうがんを起こしやすい原因は、胆石症に加えて、胆管が十二指腸につながる出口が、本来ある場所からズレる異常にも関係しています。胆管と膵管は通常は十二指腸の出口付近で合流します。が、胆管と膵管が十二指腸壁の外側で合流する「膵・胆管合流異常」になっていると、消化液の膵液が胆管へ流れ込み、胆管や胆のうに炎症が起こるのです。この状態が長く続くと胆道がんにつながります。
この先天性の異常を持つ頻度は女性が男性の約3倍です。
「膵・胆管合流異常に気づいた場合、胆道がん予防のために、胆のうや胆管を摘出する治療も確立されています。それほど、胆道がんとの関係が深いともいえます」
胆道がんは、他のがんと同様に早期段階では無症状のことが多いそうです。特に胆のうがんは進行した状態で見つかることが多く、予後も決して良いとはいえません。
「胆のうの壁が厚くなった『胆のう壁肥厚(ひこう)』は、胆のうがんのサインということがあります。胆道や膵臓に詳しい専門医のいる医療機関を受診していただきたいと思います」
もうひとつ、胆管がんと間違われやすい病気に、IgG4関連疾患があります。自分の免疫の異常な反応で全身に炎症によるコブのような腫瘤を形成するのですが、胆管が狭くなる硬化性胆管炎も引き起こすそうです。神澤医師は、胆道や膵臓の専門医であり、IgG4関連疾患の患者を数多く診ています。
「胆管がんと間違われやすいIgG4関連疾患は、ステロイド治療で症状が改善します。いろいろな病気があるので、適切な診断と治療を受けてください」