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更年期の「口の渇き」に潜む別の病気

更年期の「口の渇き」に潜む別の病気
エイジングケア
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更年期障害による「口の渇き」の注意点

更年期は頭痛やめまい、倦怠感などさまざまな症状に見舞われることがあります。思いがけない症状に口の渇きがあります。

酷暑の夏は、喉が渇いて水分補給をする機会が増えますが、口の渇き(ドライマウス)はそれとは異なります。唾液が出なくなり、「食べ物を食べるときにパサパサして飲み込めない」「口内炎がよくできる」「夜中に口の乾燥でせき込んで目が覚める」「会話がうまくできない」など、口の渇きが続くと日常生活に支障が及ぶことがあるのです。

「更年期の口の渇きは、女性ホルモン(エストロゲン)の乱れで唾液の分泌量が減るために起こります。しかし、口の渇き以外に、目の渇き(ドライアイ)や鼻の乾燥も伴うときには、シェーグレン症候群が疑われます

こう話すがん・感染症センター都立駒込病院=写真=の神澤輝実名誉院長は、消化器内科の専門医。シェーグレン症候群と間違われやすい全身疾患(IgG4関連疾患)の患者を数多く救っています。

「口の渇きがひどく、その状態が長引くときには更年期障害以外に、別の病気が潜む可能性があります。自己判断で対処するのではなく、医療機関を受診して原因を突き止めることが大切です」

ドライマウスとシェーグレン症候群の違いと対処法

更年期障害によるドライマウスは、マウススプレーやジェル、こまめな水分補給、唾液分泌を促すマッサージなどで対処するのが一般的です。これがシェーグレン症候群の場合、ひどくなると、耳からあごにかけての唾液腺が腫れるようなことも起こります。同時に、涙も出にくくなり目が痛い、物がよく見えないなど、目の渇き(ドライアイ)も引き起こすのが特徴です。

シェーグレン症候群は、50代の女性に発症しやすい自己免疫疾患で、難病指定にもなっています。自身の免疫が涙腺や唾液腺を攻撃することでドライアイやドライマウスなどになるのです

シェーグレン症候群は自己免疫疾患ですが、免疫の働きを抑えるステロイド剤では効果が得られません。ドライマウスやドライアイを軽減するために、マウススプレーやジェル、点眼薬などで対処するのが一般的です。

一方、シェーグレン症候群と間違われやすいIgG4関連涙腺・唾液腺炎は、ステロイド剤がよく効き、症状を抑えることが可能になるそうです。

「IgG4関連疾患も自己免疫疾患です。自身のIgG4という抗体の値が上昇し、それに関連した組織が炎症を起こして腫れる全身疾患です。唾液腺や涙腺の腫れるIgG4関連涙腺・唾液腺炎は、かつてシェーグレン症候群に類似するミクリッツ病と考えられていました」

シェーグレン症候群は、唾液腺や涙腺を免疫が敵とみなして攻撃することで炎症が起こり、唾液や涙が出にくくなります。IgG4関連涙腺・唾液腺炎も免疫の異常で起こり、唾液腺や涙腺にコブのような腫瘤が生じ、唾液や涙が出にくくなります。

「原因によって治療法は異なるので、唾液が出ない、涙が出にくいといった症状が続くようならば、医療機関を早めに受診してください」と神澤医師は呼びかけます。

解説
がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
神澤 輝実
東京都立病院機構がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長・IgG4関連疾患センター長。医学博士。1982年、弘前大学医学部卒。2019年4月に都立駒込病院院長に就任。2023年から現職。消化器内科の肝胆膵領域の専門医で、臨床研究を数多く行い、がんと間違われやすいIgG4関連疾患の提唱者。
執筆者
医療ジャーナリスト
安達 純子
医療ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会会員。東京都生まれ。大手企業からフリーランスの記者に転身。人体の仕組みや病気は未だに解明されていないことが多く、医療や最先端研究などについて長年、取材・執筆活動を行っている。科学的根拠に基づく研究成果の取材をもとに、エイジングケアや健康寿命延伸に関する記事も数多く手掛けている。