骨粗鬆症進行と圧迫骨折のリスク
骨粗鬆(そしょう)症が進行すると圧迫骨折(正式名称・脊椎椎体骨折)が生じやすくなる。少し重い荷物を持つ、尻もちをつくなど、少し背骨に負荷をかける動作だけで骨が潰れたように骨折する。
「圧迫骨折の程度にもよりますが、治療によって骨折した部分の骨が固まると、痛みが軽減されるのが一般的です。ただし、周辺の骨も骨折しやすいので注意が必要です」
こう説明するのは、NTT東日本関東病院整形外科の山田高嗣部長。脊椎脊髄病センター長を兼務し、圧迫骨折の患者を数多く治療している。また、脊椎椎体骨折や変形性脊椎症によって腰が左右・前後に歪み、神経を圧迫して痛みやしびれを生じる脊柱後側弯症(せきちゅうこうそくわんしょう)の治療も得意としている。「再骨折を防ぐには、骨粗鬆症の治療やリハビリ、生活習慣の見直しで骨を強くしなければなりません。しかし、骨がもろくて、最初の圧迫骨折の骨がなかなか治らない患者さんもいます」
骨粗鬆症の骨は、骨の中が網の目の状にスカスカになっている。骨折して潰れると、通常は潰れた骨が固まって変形した状態でも、痛みがとれるのが一般的だ。しかし、骨がもろくなりすぎて潰れた骨が固まらず、痛みが1カ月以上経っても取れないことがある。治療では、骨折部を固定するため、骨セメントを注入する「セメント充填療法」(経皮的椎体形成術)も行われるが、もろい骨は、骨セメントで固めた骨の上下で、新たな骨折を生み出すことも。
脊柱後側弯症による背骨の歪みと予防対策
「日頃から、そして、若い頃から食生活や運動習慣で骨の強化を意識していただきたいのです。骨粗鬆症による圧迫骨折は、骨が固まったときに身長が縮むだけでなく、背骨が歪(ゆが)むことがあります。脊柱後側弯症になるリスクもあるので、注意しましょう」
脊柱後側弯症は、脊椎が側方・後方に曲がった状態。つまり、背骨が左右・後方に曲がり、身体全体が歪んでしまう。たとえば、背骨のうち、いずれかの骨の右側・前方が骨粗鬆症の圧迫骨折で潰れたとしよう。潰れた状態で骨が固まると、背骨は右側・前方が左側・後方よりも短縮することになる。この状態が1つの骨でなく、2つ、3つと重なると背骨全体が大きく曲がることになる。
「脊柱後側弯症は、手術によって背骨をまっすぐに治すことが可能です。背骨が曲がった状態では、逆流性食道炎など内臓にも悪影響を及ぼします」
山田医師は、インプラントを用いた背骨の矯正手術を数多く行っている。
「治療法はありますが、脊柱後側弯症にならないことにこしたことはないでしょう。その予防として、骨を丈夫にする骨粗鬆症対策が重要なのです」
【写真】はインプラントを用いた背骨の矯正手術(山田医師提供)
脊柱後側弯症とは
背骨が左右・後方に傾いてしまう。原因は加齢や骨粗鬆症など。身体が大きく左右・後方に曲がっていても、痛みがないこともある。しかし、痛みや脚のしびれ、逆流性食道炎などの内臓の病気につながることも。症状がある場合は手術が選択肢となる。
※山田医師への取材を基に作成