40歳以上の女性は無症状でも要注意
骨がもろくなり転倒骨折のリスクが上がる骨粗鬆(そしょう)症は、高齢者の骨折によって寝たきりリスクや死亡率を上げる。国内の推計患者数は約1300万人。「自分はまだそこまでの年じゃない…」と無関心の人もいるだろう。しかし、高齢になる前の比較的若い時期から骨折のリスクは進行している可能性があるという。骨粗鬆症に詳しいNTT東日本関東病院整形外科の山田高嗣部長に話を聞いた。
「骨粗鬆症」の漢字を見ると、粗(あらい)という字と、大根などに隙間が生じたときによく使われる鬆(す)という字が使われている。骨の中が粗くなり、すが入ったように隙間ができるのが骨粗鬆症といえる。
「骨粗鬆症で骨の密度が低くなり、骨がスカスカになっても、骨折しないと無症状です。女性は40歳以降、健康診断で骨密度検査を受ける機会がありますが、骨密度が低く、骨粗鬆症の疑いがあっても、放置したままというケースが珍しくないのです」と、山田医師が警鐘を鳴らす。
そもそも丈夫な骨は、古くなった骨を破骨(はこつ)細胞が壊して(骨吸収)、骨芽(こつが)細胞によって新しい骨が作られている(骨形成)。年をとって骨がもろくなるのは、加齢によって骨芽細胞によって新しい骨が作られにくくなり、相対的に破骨細胞の作用が強くなるからだ。また、腸管からのカルシウムの吸収が低下することも、骨粗鬆症の原因になる。
エストロゲンが減ることで進行
一方、女性は閉経前後に女性ホルモン(エストロゲン)が減ることで、骨芽細胞よりも、破骨細胞の作用が上回るようになる。また、女性は男性よりも、もともと骨量が少ない傾向がある。もともと骨量の少ない女性が40代以降に骨の吸収が進むことで、閉経後には骨粗鬆症が進行し、骨折を起こしやすくなるのだ。
「健康診断で、骨密度が低下して『要指導』や『要精検』の結果のときには、整形外科を受診していただきたいのです。特に身長が2センチ以上縮んだ人は、骨粗鬆症の疑いがあります。放置しないようにしましょう」
身長が縮む理由は、骨粗鬆症で背骨が弱くなり、圧迫骨折することが原因となる。だが、圧迫骨折の程度によっては、痛みを感じないという。知らぬ間に進行し、身長が縮んでいく。
「もともと前屈みや猫背の人も、骨粗鬆症で骨がもろくなるとその状態がひどくなることがあります。壁に背中をつけてチェックしてみてください」(別項参照)
壁に背を向けて立ったときに「頭をつけるのが難しい」という場合は、猫背に拍車がかかり背骨が歪(ゆが)んでいる証となる。
「骨粗鬆症の疑いがあるときには、医療機関でご自身の骨の状態を把握し、早い段階から予防に努めることが大切といえます」と山田医師はアドバイスする。
壁に背中をつけてチェックしよう
- 壁に背中をつけてまっすぐに立つ
- 頭、肩甲骨、お尻、かかとが壁についているかどうかをチェック→自然に立って頭が壁についていない場合は、背骨が歪んでいる証し。身長が2センチ以上縮むことも伴うと、骨粗鬆症の疑いが強くなる