デジタル疲労と首のストレートネック
パソコンやスマートフォンの使用などで、肩こりに悩む人は少なくありません。国内での有訴者率は女性で第1位、男性で第2位となっています(厚労省2019年「国民生活基礎調査」)。ガチガチにこった肩こりは首のこりにもつながり、吐き気や頭痛、全身倦怠感などの症状にも広がることがあります。
「肩こりは、筋肉が固まって血流が悪くなって引き起こされます。しかし、首の骨(頸椎)がストレートネックになっていると、筋肉への負担はさらに増え、自律神経にも悪影響を及ぼします」
こう説明するのは、せたがや内科・神経内科クリニック(東京都世田谷区)の久手堅司院長。「肩こり、首こり外来」で、つらい症状に悩む人を数多く救っています。
「人間の背骨は、重い頭を支えるためにS状カーブになっているのが理想。しかし、前屈みの姿勢を長時間続けると、首の骨のカーブがまっすぐになってストレートネックを引き起こす。その状態が続くと、背骨の中を通る神経にもダメージを与えるようになります」
頭の重さとストレートネック:肩こりの原因と対策
人間の頭の重さは体重の10%程度といわれています。体重60キロの人は頭の重さが約6キロ。米1袋(5キロ)より重く、まっすぐな棒のような背骨で支えると、重さが1点に集中することで骨盤を含めた背骨に大きな負荷となります。頭の重さを分散するために、首から肩にかけて背骨は緩やかなカーブを描き、肩から腹部、腹部から骨盤へ向かっても、曲線になっているのです。その首の骨のカーブが失われたのがストレートネック。頭の重さを分散できず、首や肩の筋肉に負荷をかけ、肩こりや首こりなどつらい症状につながります。
「骨の中は空洞で神経が通っています。背骨の中にも自律神経が通っています。背骨が歪んでいると、自律神経にも悪影響を及ぼすため、頭痛、めまい、全身倦怠感などが起こりやすい。しかし、肩こりに気づかない人もいます」
頭痛やめまい、全身倦怠感などが続くと内科を受診しがちですが、「原因不明」といわれ苦しむことがあります。その中に、実はストレートネックが原因で慢性的な肩こりに陥り、別の症状が強く出ていることがあるそうです。
「自律神経失調症や更年期障害に悩む方の中には、正しい姿勢やストレッチなどで肩こりを改善するだけで、症状が軽減される人もいます」
久手堅院長は次の「肩周り体操」を勧めます。
(1)まっすぐに立ち、骨盤が前傾しないよう注意し、両手をまっすぐ前に伸ばして「前ならえ」
(2)息を吸いながら右手を上げ、同時に左手を下げる(両手の角度が180度になるように)
(3)息をはきながら、両手を「前ならえ」の位置に戻す
(4)左右の手を逆にして(2)(3)を行う。10回を目安に
「日頃から正しい姿勢で仕事の合間に体操などを行うと、肩こり予防だけでなく、更年期障害の症状軽減にも役立ちます。試してみてください」