人類が老化を治し、克服する時代がやってくる!?
いわゆる「寿命」には、読者のみなさんが想像する一般的な「寿命」と、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を指す「健康寿命」が存在する。
高齢化が進むなか、一般的な寿命と健康寿命の差はますます重要視される。厚生労働省の2019年の調査では、男性で8.73年、女性では12.06年の差がある。日本は健康寿命ランキング(同年)で世界1位ではあるが、平均寿命との差は、世界33位と低い数値となってしまう。このままでは日本は寝たきりや要介護で過ごす人の多い国になってしまうかもしれず、健康寿命を延ばすこと、老化に立ち向かうことが重要な課題となってくる。
そんななか、「これからの30年は、人類は老化を治す、克服する時代になると私は考えます。老化は治すものとなります」と宣言するのが銀座アイグラッドクリニックの乾雅人院長だ。
「私がみなさんにお伝えしているのは、『人類は老化という病を克服する』ということ。個人レベルでの老化は治すことができ、老化という病を克服していくことで、個人のライフプランが大きく変わり、社会も変化していくはずです」
平均寿命と健康寿命が限りなく同じに近づく
“老化を治す”ということは、「一般的な寿命と健康寿命が限りなく同じに近づくということです」と、乾院長。
「これまで言われてきた『寿命が延びる』は、人類という種としての平均寿命が延びるということでした。しかし、老化を治すことで延びる寿命は、個人の健康寿命を延ばすこと、個人の最大寿命が“延びる”ということなんです。従来の意味合いとは異なるのです。たとえばある学校や塾で、クラス全体の平均点が上がったということと、クラスの中から東大医学部合格者が出たということの違いに相当します。イメージがわきやすいのではないでしょうか。」
個人の健康寿命、最大寿命が延び、元気でいられる期間が長くなる人が増えることによって、社会にも大きな変化がこの先30年の間に訪れると乾院長は言う。
「60歳を超えて働くことが当たり前になるどころか、むしろそこからがまた新しい勝負でしょ、という考えになっていくと思います。経験を重ねた60歳にしかできないことだってあります。全社員が60歳以上のベンチャー企業が誕生したり、60歳以上のためだけのマッチングアプリがどんどん生まれたり。新しい市場ができていくと思います。おそらく生命保険の基準や設計だって大きく変わっていくのではないでしょうか」
価値観だって変化する。
「この先元気でいられる期間が10年、20年と延びていくことになるわけですから、今までの、『嫌なこともあと数年だから我慢しよう』という考えも変わります。我慢せずに解決したり対処したりするようになっていくのではないでしょうか」
老化の治療により、平均寿命との差も大幅に減少するだろう。次回からはその老化のメカニズムについて解説する。
(取材・太田サトル)